■人間生活における「犬」の位置付けの変化

 野生動物の増加に大いに関係しているというオオカミの絶滅。もう1つの要因として、前出のパンク町田氏があげるのは「犬」の存在だ。パンク氏は「犬が人間の生活を守るものではなくなった」と、“犬の飼われ方”の変化を指摘する。

「昔は、飼い犬でも放し飼いにされているケースはよくあったものです。犬はサルやキツネより強いですから、外にいる犬がそうした動物と人間の生活の境界をある程度、守ってくれたんですよね。でも、現代において犬は基本的につながれた状態、あるいは室内で飼われるのが当たり前になり、昔のように犬が外敵から人間の生活を守ってくれるようになっていません。

 キツネに家畜やペットが襲われるといいますが、基本的にキツネは襲う動物。何も今になって凶暴化しているわけではありません。ただ我々の犬の飼い方が変わったから、人家に獣が寄りやすくなっただけなんです」(前同)

 野生動物であるサルを人間の生活圏から追い払うための対策にと、犬を取り入れた自治体もあるという。2005年からサルを追い払うための「モンキードッグ」を市内で養成することで、サルを人里へと寄せ付けない取り組みを行なっているのは長野県の大町市だ。モンキードッグを導入して以来、大町市では農作物被害の軽減に効果を出しているとあって、岩手県大船渡市や京都府宇治田原町など全国にも、この活動は広がっているという。

 全国各地の自治体も動き出した“アーバンアニマル”対策。パンク町田氏は、根本的な“アーバンアニマル”対策として「個体数が増え過ぎないようにするバランスをどうやってとっていくかということが、今後求められる」と話す。動物と人間がどう共存していくのか、そのあり方が問われている。

パンク町田
1968年東京生まれ。
NPO法人生物行動進化研究センター理事長、アジア動物医療研究センター長。特定非営利活動法人日本福祉愛犬協会(KCJ)理事。
日本鷹匠協会鷹匠、日本鷹狩協会鷹師、翼司流鷹司、鷹道考究会理事、日本流鷹匠術鷹匠頭。
昆虫から爬虫類、鳥類、猛獣などあらゆる生物を扱える動物の専門家。
野生動物の生態を探るため世界中に探索へ行った経験を持ち、『飼ってはいけない(禁)ペット』(どうぶつ出版)は大ヒットとなった。動物関連での講演、執筆、テレビ出演など多方面で活躍中。