リゾートホテルやおしゃれな施設が建ち並び、日本屈指の避暑地として知られる長野県軽井沢町。そこから車で40分ほどの距離にあるのは、群馬県安中市だ。江戸時代には日本橋と京都の三条大橋を結ぶ中山道の宿場街として栄えた山間地帯にある、こちらの街。そんなエリアが恐怖におののいたのは、5月31日未明のことである。
「日付が変わった午前0時過ぎ。安中市松井田町の民家の外にある養蜂箱の近くから“ガタガタ”と音がしたそうです。住民が不審に思い、建物1階にある寝室近くの窓を開けたところ、体長1メートルほどのツキノワグマ1頭が住宅へと侵入。この家に住む74歳の男性は頭に裂傷を負い、助けに入った72歳の妻は腕を骨折。病院に担ぎ込まれました。寝室のふすまはクマによって破られ、周囲には血痕が飛び散っていました」(全国紙社会部記者)
最近、日本列島では住宅街でのクマ出没情報が相次いでいる。現に同じ群馬県でも、昨年10月だけでクマの目撃件数が128件を記録。翌11月には今回騒動の舞台となった安中市松井田町にある稲村山の登山道で、男性がクマに襲われ、顔や手にケガを負う事件も起きている。本サイトは群馬県安中市の農林課担当者に話を聞いた。まず、近年の市内におけるクマの出没状況についてだが、
「松井田町では毎年クマの出現が報告されています。クマが冬眠から明けた今の時期は、目撃情報が増えますね。市内だけでも1週間に3〜4回の目撃情報が市役所へと寄せられます。7〜8年前と比べると、目撃情報は増えています。背景には、山でクマの食べ物が不足しているなど、さまざまな要因が考えられます」(群馬県安中市の農林課担当者)
安中市としても、クマが冬眠から目覚める5月頃には、広報誌などを利用して市民へと注意喚起をしているという。広報誌の中には、クマに遭遇した場合、“落ち着いて、ゆっくりと静かにクマから目を離さずに後退する”“クマ撃退スプレーをクマの目や鼻をめがけて噴射する”などと書かれている。
「クマが出没すれば、防災無線を使って地域住民には安全に配慮するよう呼びかけますし、防災メールも送信しています」(前同)
だが、市が住民へと注意喚起をどれほど行おうが、相手は野生動物。本能の赴くままに動き回るクマから身を守るのは、至難の業であるのは想像に難くない。アジア動物医療研究センター長であるパンク町田氏は、「クマが住宅の周辺を生息地としていた可能性が高い」と、弊サイトの取材に対して指摘する。
「クマは警戒心が強い生き物ですから、初めて見た建物の中に入ってくるとは思えません。ある程度慣れ親しんだ生活圏だったということでしょう。この自宅周辺にクマにとって利益があるエサ場となるような場所があったのかもしれません」(パンク町田氏)