■元リクルート社員の鬼テレアポ「ガムテで手と受話器を固定され……」
新人も上司も部下も頭を悩ませる電話問題。会社員時代に人事担当の経験があり、労働問題に詳しい千葉商科大学准教授の常見陽平氏は、「いつの時代も新社会人にとって職場の電話は緊張するもの」としたうえで、「昔は電話以外の手段がなかったため、慣れざるを得なかっただけ」と、弊サイトの取材に振り返る。自身も1997年に新卒入社したリクルート社員時代、今なら考えられないようなアポ取りをした経験があるという。
「営業に強いといわれるリクルートでは、当時新人社員のテレアポはマストでした。リクルート用語で『テレクリ』というのがあって、“テレ”は電話(テレフォン)、“クリ”はクリーニングの略。営業先候補の電話リストに一件一件電話をかけ、リストを電話済み=キレイにしていくという意味です。
社内ではテレクリ大会があって、ガムテープで手と受話器をガッチリ固定され、20件アポを取るまで終わらないというルール。僕は午前中いっぱいかかった記憶がありますね」(常見氏)
ガムテープで手を固定されるとはスパルタだが、当時の“イケイケ”なノリのリクルートでは慣例だったようだ。社会人の第一歩は電話に慣れることだったといってもいい当時の新人は皆、電話での受け答えは「ビジネスマナー」として叩き込まれたという。常見氏は「社内で電話の練習をした」と、当時を振り返る。
「話し方や声のトーンなど、顔が見えないからこそ気を遣ったほうがいいポイントがあって、新規営業の電話でもいかに警戒されないか、相手の信頼を勝ち得るかといったノウハウを教えてもらいながら、模擬演習をする。実際、電話営業は度胸も含めて相当鍛えられたと思います」(前同)
固定電話でのやり取りを経験し、「相手に対する想像力やコミュニケーション術が養われた」という常見氏。電話をかけるだけでなく、「とる」方でも学んだことがあるそうだ。
「新人が電話をとるのは、敬語や挨拶のマナーを覚える、相手にとっては自分が会社の“顔”となるという自覚をもたせる意味合いのほかに、どういった会社と取引があるのかを覚えさせるメリットもあります。またデスクで先輩が電話をしている姿を見て、言葉遣いや仕事に対する姿勢も学びましたね」(同)