■視聴者が『サザエさん』に求めるものは何か

 視聴者が『サザエさん』に求めるものとして、前出の鎮目氏は「普遍的なファミリー像と昭和ノスタルジー」だと分析する。

「元の漫画は戦後に始まり、高度成長期とともに終わっているにもかかわらず、アニメは平成、令和へと続いているのですから、家電や生活用品をどう取り入れるのかというさじ加減は作家さんたちの腕にかかっていますよね。ただし登場人物が年齢をとらないことを考えると、前提として時空は自由(笑)。

 また、時代に合わせようとすると真っ先に反映されるのがガラケーやスマホで、たとえば『名探偵コナン』では当初なかったそれらが使われるようになっていますが、『サザエさん』は相変わらず黒電話です。そこを変えると一気にコミュニケーションが変わり、ノスタルジーも失われる。

 時代云々ではなく、『サザエさん』としての世界観がしっかりとあるからこそ、長く愛されているのでしょうね」(鎮目氏)

 アニメが持つ独自の世界観を大切にしつつ、時代性も反映させる。ほのぼのとした作風が視聴者に愛される『サザエさん』だが、そんな作品を作るために制作陣は日々頭を悩ませているのだろう。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)