■もともと”先進的”だった『サザエさん』

“原作”となる漫画の『サザエさん』は1946年4月22日~74年2月21日まで朝日新聞などで連載。そんなサザエさんのアニメ版における制作スタイルは、今も昔も原作の4コマ漫画のなかからエピソードを拾い、それを組み合わせたり膨らませたりしながら書かれているという。

 黒電話とチャイルドシートが同時に出てくるため混乱するが、「そもそも『サザエさん』は時代背景を投影した“先進的”な漫画だった」と弊サイトの取材に指摘するのは、元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏だ。

「『サザエさん』の連載が始まったのは、1946年という終戦直後。その時代、家の中の女は黙って男に絶対服従といった空気感が強いなか、サザエさんはお転婆で自由奔放。サザエさんというとほのぼのした雰囲気がありますが、漫画ではトレンドを取り入れていくというか、結構社会ネタも取り上げるスタンスだったんですよね」(鎮目氏)

 たしかに、アニメ版では15年4月26日放送回の「スーパーのお姉さん」で、専業主婦のサザエさんがスーパーのパートとして働きに出たことがネット上で《現代ふう》だと話題をよんだ。しかしパートネタは遡ること72年4月2日の放送回「パートタイムも楽じゃない」としてすでに放送されたことがある。

「『サザエさん』は、かつては新しい家族像で始まったものが原作も更新されないなかで何十年も続き、視聴者の脳裏には“昭和を象徴するアニメ”と焼き付いてしまいましたが、もともとトレンドも取り入れる自由闊達な作風。そう考えると、チャイルドシートも不思議ではありません。

 もっとも、シートベルト、チャイルドシートに関していえば、サザエさんに限らず、ドラマでも映画でも安全啓発の観点からすごく気を遣われる部分。リアルな生活を描く作品の車のシーンで必須となるのは仕方ないでしょうね」(前同)