■転売問題に「お守りは神社の“グッズ販売”ではないと伝えたい」

「お守り」であるがゆえに大量生産できず、希少価値が上がってしまった大鳥大社の『先が見通せる御守』。なかなか手に入りづらいということで、すでに他所から類似品も現れているようだが、大鳥大社は意匠登録と商標登録を出願中だとか。

 ところで、“お守りの中身を見たらバチが当たる”といった発想から「透明のお守りはアリなのか?」と素人は考えてしまうが、「問題ないですよ」と前出の大鳥大社の権禰宜(ごんねぎ)・河野氏は笑う。

「我々神主がお祓いしたものが、“お守り”になります。なので木や鉄だとダメだとか、中が見えているからダメだとか、そういうことはないんです。木のお札だってありますし、アルミのプレートにレーザーで彫ったお守りなんてものもあります」(河野氏)

『先が見通せる御守』にアクリル板を採用した背景には、SDGs的な観点も。

「お守りは汚れたりすると神様の力が弱くなってしまうので、1年に1回交換してくださいとご案内しているわけですが、古くなったお守りは御霊(みたま)抜きの神事をして“お守り”ではなくしてしまった後、通常はお焚き上げをします」(前同)

 ただし、アクリル板を燃やすと一酸化炭素に代表されるような有害物質が発生する。そこで、『先が見通せる御守』は御霊抜きを行なう際に燃やすのではなく、リサイクル業者に頼み細かいチップにしてもらっているそうだ。

「今の技術では『先が見通せる御守』に使われたアクリル板の70%までは、再生アクリル板へと生まれ変わります。時代に適った持続性のあるお守りであるという点も、アクリル板をお守りの素材に選んだ理由です」(同)

『先が見通せる御守』 撮影/編集部

 まさに令和ならではのお守り。ただ、一部ネットでの高額転売には河野氏も頭を悩ませているそうだ。『先が見通せる御守』の初穂料(はつほりょう。祈祷のお礼として神社に納めるお金)は1500円だが、倍以上の価格で転売されてしまっているのだ。

「これは商品の販売ではないんです。初穂料という言葉なのは、神社で神様にお供えしてお下がりとしていただく授与品だからであって、グッズの物販ではありません。転売したものを買ってしまうと、それはただ高いだけのストラップになってしまいます。神社での授与以外で手に入れたものは意味がないということは、今後も発信していきたいと思っています」(同)

 キラキラでかわいいアクセサリーではなく、これは時間をかけて祈祷や儀式を行なって初めてできるお守り。ちゃんとご利益のある「お守り」として正しい形で手に入れたいものだ。