■高知さんが「出直す」ために何より大事だと思うこと

 ただ、心の中で”なんでこんなことをやってしまったのか、俺は何をやっているんだろう”って自分を責めたところで答えも出ない。どんどん苦しんで、最終的には”俺はやっぱりいない方がいいんじゃないか”ぐらい思ってしまった。でも、そんな時になんとも言えない不思議なカードがどこかから投げかけられるというか……。そこに自分がどう気づけるかというのは、僕も回復し続けている、生き直している段階の自分にははっきりとしたことは言えないです。

 俺の問題を今振り返ると、子どものころに大人の都合で生きていく環境を変えられていった。そんな中で自分らしさ、子どもらしさとか自分の思いを僕は特に言えなかったんですね。知らぬ間に大人の顔色を見ながら、“嫌われたら困る”と思っていた。社会に出て大人になっても、それがしっかり自分の性格の1つになってるとは思ってもなかった。

 いいことか悪いことかもわからなくて、生きていく中で普通だと思っていた。でもそれが、いろんな形を変えて自分を苦しめた。芸能活動にしてもファンの人を増やすためには、自分をどう作るか考えて。

 でも、本質は違うし、作ってるからよけい辛くなる。人の前でも作ってる自分と作ってない自分を出してみたり、どっちも落ち着かなくなって、僕自身、非現実的な薬物に頼って“その時間だけでも全てを忘れたい”って逃げちゃったんだと思う。

 人によってどこのポイントで自分を変えるかはわからないけど、ただ僕の経験で言うと、何よりもしくじりが起きてしまった環境に戻らないことが重要だと思います。

■高知東生(たかち・のぼる)
1964年12月生、高知県高知市生。1993年に芸能活動を開始、俳優として活躍。2016年6月に覚せい剤と大麻所持容疑で逮捕される。2020年9月に自叙伝『生き直す 私は一人ではない』(青志社)、2023年1月に自伝的小説『土竜』(光文社)を出版。現在、薬物依存症からの回復の啓発活動など、多岐にわたる活動をしている。