余裕の30度超えの日が続き7月頭にして夏真っ盛りのいま、旬を迎えているのは“マグロの女王”との呼び名もあるミナミマグロだ。

 インド洋で多く漁獲されることからインドマグロの名でも親しまれているミナミマグロ。“マグロの王様”である本マグロに次ぐ高級魚だが、回転寿司チェーン店でも提供するケースが増えるなど、消費者がお手頃価格で口にできる機会が増えている。そして、その背景には、卸価格の急落があるという。

「南半球の冷たい海を回遊した身はきめ細かな美しさで“赤いダイヤ”とも評されます。甘みのある濃厚な味わいが人気。本マグロのように肉感を売りにするのではなく滑らかな食感と口触りが人気ですね」(グルメ誌ライター)

ミナミマグロが使われたマグロ丼  撮影/編集部

 ただし昨今の燃油の大幅な値上げにより、近年、ミナミマグロを最大の主力漁とする遠洋マグロはえ縄漁業は、コスト面での負担が重くのしかかるという。弊サイトの取材に応じてくれた日本かつお・まぐろ漁業協同組合組合長の香川謙二さんは「船を1隻出せば燃油だけで1億円から1億5000万円ほどもかかる」と話す。そのうえ人件費、えさ代、船の修繕費なども高騰しているという。
 
 さらにそれに加えて、卸価格の下落が――。香川さんによると、10年前の2014年に1キロあたり2124円だったミナミマグロの卸価格は少しずつ下がり続け、コロナ禍の20年には1418円と10年間で過去最低をマーク。その後復調し、22年には2483円にまで価格が上がったものの、23年には1512円と再び急落したという。これは20年に次ぐ低価格で、前年比約4割も価格が下落した計算だ。

 日本かつお・まぐろ漁業協同組合に所属する遠洋まぐろはえ縄船約140隻のうち約半数を占めるのが、ミナミマグロの漁獲船だ。香川さんによると「23年は、ほとんどのミナミマグロの操業船で年間7000万から8000万円程度の水揚げ額減少で、大半の船が赤字」とのこと。漁価状況の悪化が続けば漁船は航海に出られず、経営を継続できない。乗組員はもとより流通、造船関係者にも影響が出るという。