■本マグロがブランド化する裏で“苦戦”強いられるミナミマグロ

 円安や燃料高の影響で市場に出回る野菜や肉類、漁獲類の物価は上がっているにもかかわらず、ミナミマグロの魚価が下がっているのはなぜなのか。前出の日本かつお・まぐろ漁業協同組合組合長の香川さんが、3つのポイントを指摘する。

「ひとつめは、卸価格が1キロあたり2483円と高価になった22年に、買い控えてしまった消費者の需要が回復していない可能性。2つめは、本マグロの供給量が増えブランド化する一方で、ミナミマグロの認知度がなかなか上がらないことです」(香川さん)

 近大マグロの呼び名で知られるのは近畿大学で養殖化に成功した本マグロ。この成功が契機ともなり、本マグロの養殖が活発となり市場供給量が増加する裏で、ミナミマグロが苦戦を強いられている現状があるという。香川さんが続ける。

「国内で養殖される本マグロは、10年前に1万トンだったのが今や2万トン。海外から輸入される養殖本マグロも10年前は1万3000トンでしたが、今は2万5000トンにまで増えています。さらに大間の本マグロのように、ブランド化も進んできました。

 年間流通量は本マグロが現在年間6万トンなのに対してミナミマグロは1万5千トンほどあって、極端に流通量が少ないわけではありません。それでも、ミナミマグロはスーパーでもなかなか置いてもらえない。やはり知名度が低いからというのが大きいでしょうね」(前同)

 そして魚価が戻りづらい3点目の理由は、「冷凍庫の不足」だという。

「冷凍マグロは漁獲直後から流通段階まで、マイナス60度の冷凍庫で2年くらい鮮度を保ったまま保存できるというのがメリットです。ただ現在、マグロの搬入量が多くなっており、冷凍庫が不足している実態があります。行き場がなくなり、安く買われてしまうため、どうしても価格は戻らないんですよね」(同)