■清原果耶『城塚翡翠』の二の舞いか?

 一方、福原は清純なイメージが強いが、『マル秘の密子さん』で演じる密子は、清純に見えて裏の顔はかなりブラックそうな、ミステリアスなキャラクター。今作の“ダークヒロイン”は福原の新境地ともいえ、内容も映像の色彩も独創的で、かなり野心的な作品だ。

 設定的には『マル秘の密子さん』のほうが話題になりそうだが、フタを開けてみれば、視聴者に支持されたのは『GO HOME』だった。X(旧ツイッター)上では、《内容的に暗くなるのかなーと思ってたけど、相談室のメンバーがみんな個性豊かでクスッと笑ってた》などの声があり、週末の夜に、ゆっくり頭を休めながら見られる『GO HOME』が喜ばれたようだ。

 といっても、今回の結果はドラマの出来によるものではないだろう。『マル秘の密子さん』は福原のバディとなる松雪も好演していた。ファッション、メイク、メンタルを変えただけで、平凡なシングルマザーが大企業の社長に変貌するという奇抜な設定も、演出・構成が巧みなおかげでわかりにくさはない。しかし、週末の夜に見るには、ちょっととっつきにくいのだ。これが平日の夜なら、また違う数字が出ていたかもしれない。

 本作の色彩鮮やかでダークメルヘンな世界観は、22年放送の清原果耶(22)主演の連続ドラマ『霊媒探偵・城塚翡翠』(同局系)を思い出す。このドラマは、相沢沙呼氏の「城塚翡翠」シリーズ(講談社)が原作で、霊が視えるという主人公・城塚翡翠(清原)が、難解な事件と向き合っていくミステリー。

 これもまた、あらかじめ読者に犯人を明かした状態で描かれる、倒叙ミステリーという野心的作品だったが、全話平均視聴率が5%台と爆死状態だった。やはり、ドラマの世界観のとっつきにくさ、入りにくさが仇になったのだ。はたして、今後の『マル秘の密子さん』はどうなるだろうーー?

 ドラマはまだ始まったばかりで、先はわからない。『GO HOME』は桜(小芝)と真(大島)の背景が描かれることで、さらに視聴者の興味を引きそうだし、『マル秘の密子さん』は夏(松雪)の覚醒と密子(福原) の暗躍が本格化することで、物語を盛り上げそうだ。午後9時枠と10時枠、両作品の健闘を祈りたい。(ドラマライター/ヤマカワ)