■「都市のディストピア化」新宿区の担当者は……
件のベンチがある場所は、東京都新宿区と埼玉県川越市を結ぶ西武新宿線の中井駅近くの中井陸橋下南広場。新宿区道路課計画係の担当者に話を聞くと、ベンチを設置したのは10年ほど前のことで、ソフトコーンをベンチに取り付けたのは「昨年9月」のことだという。
「もともと広場にベンチを置いたのは、憩いの場所があればという考えからです。ただ実際には夜間に集団でお酒を飲んで騒ぐ、ゴミを散乱させるといった利用が多く、近隣に住む方たちからの苦情が止みませんでした」(新宿区の担当者)
X上にはホームレス対策かという憶測もあったが、担当者によれば「ホームレスについての苦情はない」とのこと。ただし騒音やごみ問題についての苦情は「ベンチを設置してからほどなくしてから」だといい、長い間地域住民を悩ませていたことがうかがえる。
「高架下なので、声を出すと自分が思っている以上に響くんです。それが夜間だと余計に響き渡ってしまう。区では張り紙などで注意喚起を行なってきましたが、一向に改善されない。あまりにも苦情が寄せられ続ける一方で、24時間見張っているわけにもいかないので、苦肉の策としてああいう形(ソフトコーン取りつけ)をとったという経緯です」(前同)
ならば3つの座面をすべて塞ぐ、あるいはベンチごと撤去するという案はなかったのか。
「3つの座面のうち1つを残したのは、昼間など、通常利用する方もいらっしゃることを考えてのことです。また今回のソフトコーン取りつけはあくまでも暫定的なもの。ベンチ撤去を含め、今後どうするかはまだ決めていないというのが実情です」(同)
X上には《都市のディストピア化(※反理想郷化)がゆるゆると進んでいるようだ》という声もあったが、一部の利用者たちの所業によって、どんどん使いづらくなるベンチ。区にとっても悩ましいところだろうが、このままマナーが守られなければ、街中からベンチ自体がなくなる日もやって来そうだ。