■時代に逆行する全国一律の価格設定が可能な理由

 過去6年で5度目となるココイチの値上げだが、今回ココイチが打ち出した「全国一律の価格設定も注目」と前出の岩崎氏は話す。

「近年、ファストフードチェーン業界では人件費や店舗使用料の違いから首都圏と地方店で価格差を設けるのが一般的でした。

 ココイチはその流れに逆行するかのように今回、全国一律となる価格制度を導入した。たしかに、消費者としては全国どの店舗で食事をしても金額差がないというのはわかりやすい。その反面、従来価格が安かった地方店では大幅な価格アップとなるので客離れが起きかねません。強力なライバルチェーン店が存在する業界であれば、まずは導入しない価格制度です」(岩崎氏)

 圧倒的な店舗数を武器に、カレーチェーン店の中では向かうところ敵なしといった状況のココイチ。今後、ライバルとしてその快進撃の行く手を阻むチェーン店は現れるのだろうか。

「牛丼チェーン店でしょうね。すき家、吉野家、松屋の3大牛丼チェーン店は、全国に1000店舗以上展開しています。すでに発売していますが、これらがよりカレー専門店の業態に進出してきた場合、ライバルとなり得ます。また、コンビニも強大なライバルですね」(前同)

牛丼チェーン店はライバルとなるか ※撮影/編集部

 ココイチはベースとなるポークカレーに卵やチーズ、とんかつなどのトッピングを2~3品付けていけば優に1000円を超える価格帯とあり、ファストフードチェーン店としては高価格の部類だ。

「コンビニであればその半額ほどでカレーを食べられる。安価で上質なカレーをコンビニが提供すれば、ココイチの客を奪う可能性はあるでしょう」(同)

 辛さが売りのカレーだが、その裏ではシビアな戦いが繰り広げられているのだ。

岩崎剛幸
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。著書に『図解入門業界研究 最新 アパレル業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)
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