観光庁の発表によると、2023年の日本人国内旅行消費額(速報値)は前年比27.5%増、過去最高だった19年と比べても0.2%減となる21兆8802億円だった。

 新型コロナウイルスに伴う移動制限などの影響で大きく落ち込んでいた国内旅行業界だが、コロナ前の水準まで回復しつつある。また大手旅行会社のJTBによれば、24年の訪日外国人旅行者数は過去最高の3310万人に達すると推計。旅行客による国内ホテルの需要はますます高まっている。

 その中で注目されているのが、「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO(おも)」「BEB(ベブ)」の5ブランドを中心に国内外でおよそ70施設を運営する星野リゾートだ。

「24年に国内6施設の開業・リニューアルも進めており、6月20日には千葉県の新浦安に『星野リゾート 1955東京ベイ』を開業。これが注目を集めています」(全国紙経済部記者)

『1955東京ベイ』は星野リゾートにとって千葉県内初進出であるのに加え、高級宿泊施設として知られる同社のブランドとしては破格の1人1泊5000円代からとリーズナブルな価格設定が魅力。さらに「世界初のディズニーランドが誕生した55年頃のアメリカの世界観」をコンセプトとし、東京ディズニーリゾート(TDR)への無料シャトルバスを運行するなど、TDRを強く意識したホテル作りとなっていることが話題の的に。フジテレビ系『めざましテレビ』やTBS系『王様のブランチ』といった情報番組でも取り上げられていた。

 しかし、TDR周辺は提携ホテルが19施設もあり、すでにホテル激戦区と言える地域だ。なぜ星野リゾートは激戦区である浦安エリアへと進出したのか。『辛口評論家、星野リゾートに泊まってみた』(光文社新書)などの著書もあるホテル評論家の瀧澤信秋氏が、取材に応じてくれた。

「ここは23年いっぱいで閉館した東京ベイ東急ホテルを改装し、リブランディングしたもの。星野リゾートはオーナーではなく、あくまで管理運営を受託した形なので、オーナー側がこの競争の激しいエリアで生き残っていくためには『星野リゾート』というブランドの集客力が必要だと判断したという捉え方もできます」(瀧澤氏)

 実際、星野リゾートのブランド力というのはホテル業界では群を抜いて強いのだという。

「有名になった背景にある広報・PR力をはじめ、ブランディングもうまいですし、実際にお客さんも集めてますしね。オーナー側からすればホテルの看板をどうするか、運営をどこにするかは重要なテーマであり、コンペで決まることも多々あるんですが、星野リゾートは指名で声がかかるという話も聞きます」(前同)