■「トンチンカン」な理想を掲げる人たち
50歳時の未婚率を示す生涯未婚率は年々上がり、総務省『国勢調査』によれば、2020年時点で男性28.25%、女性17.81%。前出の植草さんが「1970年代まで女性は“社会で働かない”のが当たり前。お見合い結婚が多く、“永久就職”として結婚した時代」と振り返る通り、70年の生涯未婚率は男性1.7%、女性3.33%にとどまっていたことを考えると、この50年での結婚事情の激変ぶりがうかがえる。
「女性が社会に出て収入を得るようになり、生き方に選択肢が増えました。自分に稼ぎがあれば必ずしも目の前の人と結婚しなくてもいいかもしれない、という考えが頭の片隅にはある。とはいえ子どものことを考えると結婚はしたいなど、葛藤しながら人生を送っている女性は割と多いです」(植草さん)
“なんとなく”生きているだけでは結婚できない時代。結婚したくてもできない人には共通項があるという。
「自分の生き方や将来をきちんと考えられていないんですよね。とにかく目先のことしか考えていない。ただしこれは本人だけが悪いわけではなく、日本社会がもたらした“思考のコンパクト化”で、生まれた時から親や社会がその子の道を作っていることが影響していると思います。
一部の人は別として、いい大学に入り、なるべくいい会社に入ることが“よい”とされる。結果、気づくと勉強や仕事ばかり頑張っていて、恋愛をしておらず異性との距離感がわからなかったり、マナーや身だしなみが整っていなかったり、家事や身の回りのことができなかったりするのですが、そういった“結婚できない理由”を自己分析したり向き合って改善できていないんです」(前同)
自分の生き方・価値観は変えたくない、変えられないという人が増えたということか。
「結婚相談所に来ても、“入会すれば結婚できる”と思い込んでいる人は多くて、“だからあなたは結婚できないんですよ”と言いたくなるようなトンチンカンなことを言う。
たとえば40歳の女性で、お相手は35歳から40歳までの男性、なおかつ自分の年収より倍の稼ぎがある人と結婚したいです、っていうのは、ちょっとトンチンカンじゃないですか。視野が狭い。
男性も、45歳を過ぎたあたりから顕著に10歳下の女性を求め出すんですよね。さらに50歳でも60歳でも、子どもが欲しいとなると35歳ぐらいをお相手の条件にします。当社でも67歳で子どもが欲しいという方が、20代の女性を希望していましたが、それはもう到底無理な話です。
共通するのは、ただただ考え方が“I want”しかないことです。自分を客観視できなくて、社会的な価値を知らなさ過ぎる。結婚は“ドリーム”ではなくて、“ライフ”なんですよと」(同)