■道頓堀川の大腸菌の数は遊泳基準値の7倍
戦後間もない復興期間には、市民からも「川から異臭がする」といった苦情が市へと次々寄せられていたともいう道頓堀川。当時の道頓堀川の水質汚染を示す基準値は、現在の7〜8倍ほどだったそうだ。市としても昭和50年(1975年)頃から道頓堀川の水質改善へと本格的に着手をし始める。
「川底を掘るしゅん渫(しゅんせつ)専用の船を使用したり、川の水に酸素を循環させようと噴水やウォーターカーテンを導入したこともありました」(前出の大阪市建設局河川課の担当者)
それでも、なかなかきれいにならない道頓堀川。そんななか、昭和53年に行なわれた改革が水質改善に大きく貢献することとなる。
「大阪市内を東西に流れる道頓堀川ですが、東の端に行くと市内を南北に流れる東横堀川とつながります。東横堀川の先には大川と寝屋川があるのですが、寝屋川周辺は工業地帯ということもあり、工業廃水が溜まりやすい。汚染された寝屋川からの水が東横堀川へと流れ込まないように、東横堀川の北にある水門の開閉を人工的に行ない、道頓堀川へと寝屋川の水が入らないようにしたのです」(前同)
この試作が大当たり。道頓堀川の水質はみるみる改善する。実際、水中で暮らす微生物が、水中にあるゴミを分解するのに必要とする酸素の量を示す生物化学的酸素要求量は、昭和40年代に1リットルあたり36ミリグラムだったのが、昭和50年代後半には3〜4ミリグラムにまで激減している。つまりは、道頓堀川内で生物が活動する際に必要とする酸素量は減少しており、川の水は年々浄化されているというわけだ。
「水質改善の甲斐もあってか平成25年(2013年)には道頓堀川沿いに遊歩道を設けることができました。現在、道頓堀川では100ミリリットルあたり7900の大腸菌が含まれています。一般的にはこの数字が1000を切れば遊泳可能だと言われている。今後も少しでも水質が改善すればと思います」(同)
きれいになっていっている道頓堀川。大阪人が堂々と「セーヌ川なんかと比べてんちゃうぞ」と言える日も近いのかもしれない――。