■リメイク作品のほうが「難易度が高い」ワケ

 アニメ化といえば原作に忠実かどうかがファンの間で議論の争点となりがちだが、振り返れば以前の方がアニメはやりたい放題だった。今なら1期、2期と分けるところを昔はアニメオリジナルストーリーを挟み込んで放送期間を引き伸ばしたし、アニメオリジナルキャラクターもよく登場した。それも“テレビ局主導”だったことが大きいと考えれば合点がいく。

「昔『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』というテレビアニメ作品があって、ストーリーのとてもいいところでテレビ局の事情で放送が打ち切られてしまったことがあるんです。一方、令和版は製作委員会方式でリメイクし、原作の最終話まで描き切りました。リメイクには、昔のアニメ化に不完全燃焼感を抱いていた人たちが、あらためて原作を大切に作り直したいという思いもあるのかもしれません」(前出のいしじまえいわ氏)

 ただしリメイク作品ならではの難しさもあるという。現代の“コンプライアンス”だ。

「『らんま1/2』に登場する八宝斎というキャラクターは最強ながらとにかくスケベなじいさんで、普段は下着泥棒を敢行したりと、今のご時世においてアウトな行動しかしないと言っていいほど。『ぬ~べ~』も作品としてはお色気描写が豊富な部類の作品なので、今のご時世的にどこまで原作に忠実に描くのかのは、原作や昔のアニメを知っている人なら気になるポイントでしょう」(前同)

 そう考えると、過去作品と比較されてしまうリメイクアニメは“安牌”というよりも、むしろハードルが高いともいえる。

「リメイク作品は、原作や過去作のファンの反応を一定数は見込めるものの、多くの場合、完全に往年のファンだけに向けたものでもありません。原作・旧アニメファンを満足させつつ新しいファンも取り込んでいくのは本当に大変なこと。

 一方で、たとえば23年にヒットした映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』はリメイク作品から派生したスピンオフ作品でしたが、新旧どちらのファンも頷ける作品に仕上がっていました。原作の良さを活かしつつ今の価値観を上手に反映させてリメイクすることは、むしろ発展的で意義のあることだとも思います」(同)

 再アニメ化される作品には、それだけ魅力と制作陣の並々ならぬ想いがこもっているということだ。新旧に違いがあるのは当たり前。変わった部分があれば、その裏にはどういった事情があるのか、考察するのもリメイク作品の楽しみ方と言えるのかも。

いしじまえいわ
アニメライター/講師/コンテンツコンサルタント
「アニメ業界ライティング講座」講師 / 「IMART2023」運営委員 /長崎行男・著『埋もれない声優になる! 音響監督から見た自己演出論』(星海社) 構成 など