■コロナ禍での休校、リモートワークが大麻利用のきっかけに
コロナ禍での休校、リモートワークの普及も若年層の大麻使用率増加に拍車をかけたのでは、と前出の瀬戸氏は指摘する。
「社会との孤立や孤独を紛らわせる手段として違法薬物に手を出した人も少なくないはず。その結果、30歳未満の大麻使用率急増につながっているのだと思います」(瀬戸氏)
長年、違法薬物取材の最前線に携わってきた瀬戸さんは取材の最後に「まさか、この子がというような“どこにでもいる普通の子”が違法薬物の罠にハマりやすい」と話す。
「薬物対策は“しない”“させない”が原則です。しかし、不幸にして手を出し依存症に陥った場合は、少なくとも3年間は薬物との戦いが続きます。家族やパートナーの支えなしにはこのドロ沼から抜け出せません。万が一薬物に手を出したら、自分だけでなく周りにも迷惑をかけるというのを忘れないでもらいたい」(前同)
気がつかないだけで、違法薬物の脅威は私たちの生活のすぐそばに迫っているのだ。
瀬戸晴海
1956年、福岡県生まれ。明治薬科大学薬学部卒業。80年に厚生省麻薬取締官事務所(当時)に入所。薬物犯罪捜査の第一線で活躍し、九州部長などを歴任。2014年に関東信越厚生局麻薬取締部部長に就任。18年3月に退官。著作は『マトリ 厚労省麻薬取締官』(新潮社)、『ナルコスの戦後史』(講談社)など。