有名スポーツ選手が立て続けに起こした性加害スキャンダルが世間を騒がせている。

「7月29日に釈放されたことがマネジメント事務所を通じて発表されましたが、サッカー日本代表で、今夏、鹿島アントラーズからドイツ・ブンデスリーガのマインツに移籍したばかり佐野海舟選手(23)が、知人男性2人と共に30代の女性に都内のホテルで暴行を加えたとして、不同意性交容疑で7月14日、警視庁に逮捕されています。

 また、2022年の全米オープン選手権への出場歴があるプロゴルファーの杉山知靖選手(31)も7月23日に、24歳の知人女性に対する不同意性交容疑で神奈川県警に逮捕されたことが発表されました。図らずもスポーツの祭典であるパリ五輪が開催される直前のタイミングで有名スポーツ選手の不祥事が相次いだ形です」(スポーツ紙記者)

 不同意性交等罪では「性的同意」があったかどうかが判断基準の1つになる。この「性的同意」という用語が広く世間の関心を集めるようになったのは、23年頃からだ。

 23年6月の刑法改正で「不同意性交等罪」が新設。いわゆる“性的暴行”として捜査機関により捜査される対象が、“意思に反して行なわれた性行為”にまで拡大された。これまで暴行・脅迫などがなければ刑法上「犯罪」とはされなかった性的暴行。それが、同意があったとは認められない性的行為など一定の行為類型にあたる限り「犯罪」となることが決まったのだ。また夫婦間でも性犯罪たり得ることも明文化されている。

 しかし、2人の間の秘め事を前にして、互いに「同意の確認」を取り合うことなどないはず。こうなると「同意とは何か」と考える人もいるのではないだろうか。そこで弊サイトは、「性的同意」とは何かについて、2017年に性暴力被害を公表したジャーナリスト伊藤詩織さんの弁護を担当した佃法律事務所の佃克彦弁護士に話を聞いた。

 まず、「性的同意」が議論されるようになってきた背景について、佃弁護士が解説する。

「世の中で行われている性行為のうち、残念ながら一定割合は真意(本当の気持ち)に基づく同意がありません。同意がないのに、“同意がなかった”ことにされていない行為が現実にあって、そこをなんとかカバーしようとして、刑法が改正されたのです。これまでは、暴行・脅迫がなければ犯罪とはされなかったものが、同意があったとは認められない場合をある程度想定し、同意に基づかない性行為がより広く規制の対象へと取り込まれたのです」(佃弁護士)

 では、「性的同意」とはいったい何か。

「要するに、お互いの間に“真意”に基づく同意があるかどうかという話ですよね。後から“あの時は同意していなかった”と言われるということは、2人がその程度の関係でしかなく、その程度の関係でしかなかったのに行為に及んでしまったということは、当事者間に真意の同意に基づく性行為をするだけの関係がなかった可能性が高いわけです。

 ではどうやって事前に”真意”があったのかを図るのかというと、それは人の心の内の問題であり、人間関係の問題であって、理屈の問題ではありません。事前に同意のハンコをもらっておく、といったような表層的なことを議論しても意味はありません。それまでの2人の関係やコミュニケーションから相手の気持ちを推し量って判断すべきだという話であって、結局のところ”強引なことをしてはダメ”だということです」(前同)