8月11日は山の日。連休期間とあって、夏のレジャーの一環として登山やキャンプに出かける人も多いだろう。山は平地に比べて標高も高く涼しい……猛暑を凌ぐには持ってこいと思いきや、実は熱中症リスクが高い場所でもあるそうだ。気分や体調が悪くなっても、すぐには病院へと駆け込めるわけではないため、熱中症にはいつも以上に気をつけたい。

『猛暑対策BOOK 日本のヤバい夏を最新科学の力で乗り切る!』(小学館)の著者で筑波大学助教、運動生理学専門の藤井直人氏が、登山・キャンプでの“落とし穴”を解説する。

「山に登っている時、標高が高くなればなるほど気温は下がります。ただし登山は長時間歩きっぱなしで、深部体温(※脳や臓器など、体の内部温度。正常の目安は37度前後とされる)は上がるんですよね。たとえば外気6度という冬場の登山で、深部体温が39度になっていた例があります。夏場で日差しも照っているなかでは、もっと上がってしまう人が出てきてもおかしくありません。

 また運動強度は低くても、日差しを浴びながら数時間かけて山を登る登山では、いつの間にか脱水状態になりやすい。しかも高いところにいけばいくほど水は蒸発しやすく、体からも水が蒸発していくことになります。ただ汗がすぐに蒸発し、皮膚に残らないような状況では脱水に気づきにくくなる。平地と感覚が違ってくるので、体温の上がり下がりと水分補給にはより敏感にならないといけません」(藤井氏)

※画像は藤井直人公式X『@naotofuj』より

 そんな夏場の登山のお供におすすめなのは、水よりもスポーツドリンクだそうだ。

「汗を大量にかく動きっぱなしの状況下で、水分補給をするなら水よりもスポーツドリンクのほうが適していると思います。水だけ大量に飲んでも、尿が多くなり水分が体に残らないのですが、スポーツドリンクにはナトリウムが含まれていて、飲んだ水が体に残りやすい。さらにスポーツドリンクには糖が含まれていて、エネルギー補給になるメリットもあります。

 ただし、水でもスポーツドリンクでも、飲みすぎると頭痛や嘔吐などの症状を引き起こす低ナトリウム血症になることもあるので、あまり汗をかいておらず喉の渇きがない場合は、無理には摂取しないほうがよいでしょう」(前同)