■「人生100年時代」の美容医療を考える

 確かに、人工物の使用により、“現在”の自分の整容性満足は得られるかもしれません。あるいは、その先10年間は満足するかもしれません。

 でも、考えてみてください。現在の日本人の平均寿命は女性が87.09歳、男性が81.05歳です。また、日本の平均年齢は48.6歳であり、モナコに続いて世界第2位です。ただ、モナコは人口約3万人の小さな国であり、小規模な国や地域の平均年齢は比較的高い傾向にあるので、実質、日本が一番高齢化が進んでいると言っても過言ではありません。そんな日本に住む我々にとって、安易に人工物を利用した美容医療を受け入れる患者さんに警鐘を鳴らしたいのです。

 そして、いずれ自分たちの問題となる「シニア美容」の本質を考えて欲しいのです。20~30代で入れた人工物と一緒に、その先50~60年を添い遂げる覚悟はありますか? パートナーにずっと秘密にして、生きていくのですか?

 最近、「人生100年時代」という言葉をよく耳にしますが、この言葉が一人歩きしていて、実際にその現実に向き合っている人はあまり多くないように思います。まず「人生100年時代」とはどのような状況なのかを整理していきたいと思います。

 20世紀以降、世界は未曽有の高齢化社会に突入しました。イギリスのデータになりますが、1800年代までは平均寿命は40歳前後でした。しかし、1900年代に入り飛躍的に平均寿命が延びて、わずか100年で約2倍になっています。

 これは時間軸で見ても驚異的な数字であり、経済(GDP)や公衆衛生(医療費)の向上が関係していると考えられます。19世紀、世界は貧困と医療過疎の中にありました。20世紀、先進国で平均寿命が60歳を超えました。21世紀、全世界の平均寿命は 72.6 歳になりました。そして現在、日本人の生存確率は下記になります。

■2人に1人は80代半ば
■4人に1人は90代前半
■10人に1人は90代後半
■20人に1人は100歳以上

 この生存率通りにいくと、将来の日本の100歳以上の人口はなんと630万人以上になるのです。しかも、ある海外の研究では、2007年生まれの子どもの約半数は107歳まで生きると予想されています。それは今の平均寿命よりも約20年長く、超高齢化社会が加速度的に進むということです。