もはや毎年のように耳にするようになった“記録的猛暑”という単語。環境省は“危険な暑さから命を守る行動を”と呼びかけるものの、同時期に忙しく働かざるを得ない人たちもいる。葬儀関係従事者もその一例だ。

 厚生労働省が発表する年間死亡者数を月別にみると、寒い時期が多く夏は少ない。しかし高齢化社会の影響もあり2023年の日本国内における死亡者数は157万5936人と前年よりも6886人増加。この数字は年々右肩上がりで増え続けている。そのため、地域によっては、火葬場は季節を問わず慢性的に不足している現状がある。

「今年6月には東京23区内で行なわれる火葬のおよそ7割を担う、民営の火葬場の費用が従来の5万9000円から9万円へと大幅値上げ。火葬場不足の影響と考えられています」(夕刊紙記者)

 葬儀社に長年勤務する現役社員で「考える葬儀屋さんのブログ」管理人の赤城啓昭氏が実態を話す。

「都市部に人口が密集した結果、需給バランスとして火葬場の“待ち日数”が増えている自治体はあります。

 亡くなってから火葬までの理想は2~3日のところ、たとえば神奈川県横浜市では平均5日待ちという状態。現在市内には市営の火葬場が4つ、民営の火葬場が1つありますが、25年に26%を超えるという市内の高齢化率を考慮すると当然、死亡者数も増えていく。そのため、火葬需要への対応は喫緊の課題です。

 そうした背景から横浜市では18年頃から5つめの市営火葬場を検討していて、26年にはできるはずですが、材料の高騰や人手不足などで完成は遅れています」(赤城氏)

 火葬までの日数が空けば、そのぶん遺体を安置しておく費用がかさむ。前出の赤城氏によれば、「火葬場が埋まっている」とウソをついて日程を先延ばしにし、安置料を稼ぐ悪徳葬儀業者もいるという。