■「ドライアイスはボッタクリ」クレームも

 猛暑が続く夏。外気が暑ければ暑いほど遺体の腐敗も早い。そんな時に活躍するのはドライアイスだ。前出の赤城氏が、猛暑のさなかでの遺体安置の“リアル”を語る。

「遺体の状態を保つためにはドライアイスを利用するのが一般的です。腐敗は体内から始まるので、エアコンで室内の温度を下げてもあまり意味はありません。ドライアイスの料金は、量や気温にもよりますが、1日あたり5000〜1万円です。

 時々“ドライアイスに何千円もとるのはボッタクリじゃないか”というクレームを受けることがありますが、ドライアイス自体の価格というより人件費なんですよね。ドライアイスの交換のために自宅を訪問する必要がありますし、肝炎や結核などの感染症に対応するコストも含まれます」(赤城氏)

 なお、ドライアイスは猛暑の影響で食品業界をはじめ、需要が急拡大している。それにもかかわらず原材料が不足しているため、冷凍品・冷蔵品を扱う業者は戦々恐々としているところだが、赤城氏いわく「まだ業界でドライアイス不足を聞いたことはないが、もし不足したらシャレにならない」とのこと。なぜなら死亡者の発生はコントロールできないからだ。

「火葬待ちの遺体を腐らせないよう、大手葬儀社ならカプセル型の保冷装置などをサービスメニューとして保有するところもあります。ただ、これらのサービスを行なうには業者側も初期投資が必要なので、業界内での普及率は低いままです」(前同)

 近年暑くなり続ける夏は、腐敗スピードとの勝負。また病院ではなく、自宅で亡くなった場合、悲惨なことになるケースは跡を絶たないという。

「生々しい話で恐縮なのですが、自宅で急死して発見されるようなケースですと、夏場は遺体の状態が良くないことが多いです。多少の変化であれば修復技術でなんとかしますが、限度はある。(ひどい時は)残念ながら遺族との最期のお別れができず、先に火葬してからお葬式を行なうということもあります」(同)

 最近は、葬儀の簡略化を望む人が増えている。“式はしないでいいから火葬だけ”――言うのは簡単だが、実際には火葬を手配するのもなかなか難しいのである。