■惜しいフジテレビスタッフとのマッチング

 X(旧ツイッター)上でも、《ここへ来て脚本と演出の息がぴったり合った。作品に溢れる愛が見事に映像になってる》《雑だけど回を増すごとに面白くなってきて良いなぁと思う》《登場人物かなり多めなのに、その人となりがちゃんとこちらに伝わってくるのすごいよね。みんなそれぞれ生きている》などと、絶賛する声が多い。

 残念ながら本作の序盤は、ここまでのクオリティに達していなかった。ドタバタしているのはいつものクドカン脚本だが、そのドタバタの加減が、どうもしっくりきていなかったためだ。クドカンはフジテレビ作品は久しぶりとあって、脚本と演出が上手くマッチングできていなかったのではないか。

 それが第8話にして、ようやく噛み合い始めた感じがした。おなじみのスタッフで制作され、話題作となったTBSの『不適切にもほどがある!』と同様、フジテレビのスタッフ陣も、クセのつよいクドカン脚本と、話数を重ねることで息が合ってきたのだろう。

 また、序盤のもたつきは、クセの強いキャラが多すぎたことにも、原因があるだろう。彼らの背景を説明するのに時間が取られてしまい、それぞれがイキイキと動き出したのは最近のことだ。ストーリーとの都合もあるが、もっとキャラを絞っていれば、今回のようなグルーブ感が早く出ていたかもしれない。

 以上の2つの問題点のため、ギアが上がるのが遅すぎてしまい、数字をなかなか伸ばすことが出来なかった『新宿野戦病院』。夏ドラマで一番惜しい作品になってしまったと言える。

 いよいよ物語は最終盤。次回予告では、ヨウコのアメリカ帰国がほのめかされていたが、はたして真意は? 残り話数は少ないが、ようやく仕上がってきたクドカンワールドを楽しみたい。(ドラマライター/ヤマカワ)