■“サブ推し活”需要にもマッチか

『マツケンサンバⅡ』とアイドルといえば実際、人気5人組アイドルグループ・Aぇ!group小島健(25)が“マツケンサンバ”ならぬ“コジケンサンバ”を持ちネタにしていることから、昨年6月に音楽番組で松平健本人との共演が実現し、大きな話題になった。

 加えて、“サブ推し活”という若者の今の気分も影響しているようだと、前出の原田氏は指摘する。

「大半の若者がなにかしらの推し活をしている時代ですが、人気のアイドルになるとファンの熱量が高すぎるあまり、推しが同じ人とは交流したくないという“同担拒否”があったり、ちょっとした発言が引き金となってファン同士でトラブルになったりと、殺伐としやすく、人間関係で疲れやすい。

 そうしたなかで、本命の推しとは別に、ゆるく、気軽に応援する対象を見つけるのが“サブ推し活”で、そこに松平さんがうまくハマったのでしょう」(原田氏)

 また、“天国界隈”と呼ばれる若者文化の流行も関係している可能性があるそうだ。

「趣味嗜好に応じたゆるいコミュニティを意味する言葉として“界隈”という表現が定着していますが、“天国界隈”はおじいちゃんやおばあちゃんのホッコリする動画などにハッシュタグとして付いているのを見かける言葉。

 その呼び方を失礼だとする意見もありますが、おじいちゃん・おばあちゃんが孫を可愛がるように、孫世代がおじいちゃん・おばあちゃんを“かわいい”と見る傾向があるんです。70歳の松平さんに対してもそうした親近感を抱いている面もあるのではないでしょうか」(前同)

 もはや国民的ソングと言えるヒット曲と、暗い世相も吹き飛ばすような金ピカのゴージャスな格好。カッコ良くて頼もしかった暴れん坊将軍から、皆に愛される“マツケン”へ――松平健は今後、さらに愛される存在になっていくのだろう。

原田曜平
慶應義塾大学商学部卒業後、広告業界で各種マーケティング業務を経験し、2022年4月より芝浦工業大学・教授に就任。専門は日本や世界の若者の消費・メディア行動研究及びマーケティング全般。 2013年「さとり世代」、2014年「マイルドヤンキー」、2021年「Z世代」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネート。「伊達マスク」という言葉の生みの親でもあり、様々な流行語を作り出している。主な著書に「寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生(角川新書)」「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?(光文社新書)」など。