■周囲とのなじみ方がすごい毎田暖乃の演技

 寅子は星家で暮らすようになっても、相変わらず思ったことをつい口に出してしまうが、そこを優未がうまくフォローしてくれる。下手をすれば、子どもが母親に苦言を呈する、うっとおしい存在になってしまいそうだが、セリフ、仕草、表情で表現する毎田の絶妙な演技によって、引っかかりなく受け入れられている。驚くほどにドラマ世界に溶け込みきっているのだ。

 優未の役を前の子役(竹澤咲子/9)から引き継いで演じるにあたり、毎田はインタビューで、竹澤が演じていた優未が、大きくなったらどういうふうになるのかを考えたと語っている。実際、毎田が初めて登場したときの、前役からの違和感のなさがものすごかった。もちろん、伊藤の受け方あってのことではあるが、優未という存在を引き立たせているのは、間違いなく、子ども時代を踏まえて役を作った毎田の力だ。

 猪爪家では、寅子を理解してフォローする立場は、彼女の親友であり兄の嫁でもある花江(森田望智/27)だった。突っ走る寅子の軌道修正をしていた花江がいたからこそ、寅子というキャラが成り立っており、物語の裏主役と言うべき存在だった。

 そんなフォロー役を花江から受け継いたのが優未だ。ストーリーの主役にこそならないが、確実に場面をしっかり支えている。星家を舞台にした終盤の裏主役と言ってもいい。もし毎田という天才子役がいなければ、画面はもっとだるいものになっていたはずだ。終盤に来てさらに魅力を増した『虎に翼』に注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)