■世界的な巨大テック企業こそ「対面」を重視してきた理由
Amazonの決定について日本のX上では、《義務にしなくても良いのでは?》と慎重な見方をする声が続出。《コミュ力高い人同士ならリモートでも成果出せると思う》《働き方改革を逆行してる》と疑問を呈する声も見られる。
会社員時代に人事担当の経験があり、労働問題に詳しい千葉商科大学准教授の常見陽平氏は、「巨大テック企業はいかにもリモートが“得意”かと思われがちですが、ひざを突き合わせて話した方が話が早いことをどの業種よりもわかっている」と指摘する。
「世界を変えるイノベーションを起こすような企業のトップは、そもそもアイデアはクリエイターやエンジニアを含め対面の方が生まれやすく、議論も活発化することを肌で知っています。だからこそ、名だたるIT企業であればあるほど、会社に行きたくなるようなオフィスづくりをしています。機能的でスタイリッシュ、また“遊び”のあるオフィスはクリエイティブな思考を刺激し、パフォーマンスを高めるという考えです」(常見氏)
たしかに18年に完成した米・ワシントン州にあるAmazon本社は球体の建物の中に熱帯雨林が広がっていることが話題をさらった。カルフォルニア州にあるGoogle社は社員は無料で使える豪華食堂があることで有名だし、同じくカルフォルニア州の広大な緑地のなかにそびえるApple社の新社屋はカフェやシアターも併設した豪華建築だ。
その他、世界のトップIT企業のオフィスは快適な仕事環境の整備は大前提として、充実した飲食施設と娯楽設備、ソファや照明にこだわるくつろぎエリアなど、リフレッシュもコミュニケーションも可能な空間づくりが意識され、「こんなところで働いてみたい」と思わせるオフィスばかりだ。
「さらにいうなれば、最先端の世界的企業には頭の回転が早い人たちが揃っていて、会話の処理能力が非常に高い。意思決定から実行までのスピード感も重視します。オンラインツールだとそうした会話のスピードや質についていけないという側面もあるでしょう」(前同)
たとえばオンライン会議やチャットツールだと、どうしても一人が完全に発言し終えるまで待機する必要があり、効率が悪い部分もある。一方で対面だと相手の表情や“流れ”を読みながら、スピーディーなやり取りができる。世界を動かす企業では、そのテンポが圧倒的に早いというわけだ。