■必ずしも全企業が「週5日出社」がベストではない

 対面で作業をすることには効率の良さがあるわけだが、前出の常見氏は、「必ずしもすべての企業が週5日出社すればいい、ということでは決してない」と強調する。

「コロナ禍を経てリモートワークとオフィスへの出社を掛け合わせた“ハイブリッド式の労働”を上手に活用できるようになったのは、良いことだと思っています。出社したほうが効率のよいこともあるし、一人で作業をしたほうが集中できることもある。

 また出社しても、会議はオンラインで必要な時だけ参加する、あるいは音声で会議内容を把握しながら別作業をするなど、“社内オンライン”を上手に取り入れる人たちは多いのではないでしょうか。

 企業側も、たとえば作業スペースとしてカウンター、カフェふうテーブル、個室などいろいろなスタイルを取り入れ、社内で多様な働き方ができるようにするのが最近のトレンドです。出社とリモートワークのバランスは会社の事業内容や規模によりますし、個人の職種によっても事情は異なるもの。どうしたら事業の生産性が上がるかを考え、有機的に組み合わせることが大事です。出社か否かだけが論点ではないのです」(常見氏)

 出社VSリモートワークという二項対立ではなく、その企業の発展にとって最適な働き方は何かを意思決定するのが経営陣の仕事。Amazon・CEOのジャシー氏は、今回のメッセージにおいて「週5日出社」に社員が適応するには時間がかかることを承知しているとしながらも、「サービスや新しいものの創造、そして従業員の成長と成功にはプラスの影響を与えると非常に前向きに考えている」と締めくくっている。

常見陽平
リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て2015年より千葉商科大学国際教養学部専任講師。2020年より准教授。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。
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