■匿名虚偽投稿がなされた時、店ができること

 飲食店の場合、予約客でもない限り、どこの誰がネット上へと口コミを投稿したのか個人で突き止めるのは難しい。ではもし匿名の投稿者に明らかな虚偽投稿をされた場合、店にはどういった対処法があるのか。

「まずお金がかからない方法として、偽計業務妨害罪として、警察に相談することができます。この場合どの警察署でも相談可能なわけではなく、あくまでもお店のあるエリアを管轄する警察署ですが、その警察署によっても対応に温度差があるのが現状です」(前出の勝間田弁護士)

 警察はあくまでも刑事事件を扱い、民事不介入という立場。そのため、“警察に行ったら、先に弁護士に相談してくれと言われた”として、相談者が法律事務所に駆け込むケースも多いという。

「ネット上に書き込まれた口コミの投稿者を特定する場合、依頼人は弁護士を通じて裁判所に開示訴訟を申し立てることができます。また明らかにその口コミが原因で売上が減ったという立証ができれば、損害分として投稿者への請求が可能です。そのほか名誉毀損などで訴訟することもできるでしょう」(前同)

 とはいえ、口コミの投稿者に必ずしも支払い能力があるとは限らない。かつ、店側の納得のいく金額を満額払ってもらうまでのハードルは高い。

「どうしても投稿者がお金の支払いを拒む場合、訴訟といった手段を取ることになります。そして、店に対する支払を命じる判決が出た場合、その投稿者が定職についていれば給料の一部を差し押さえるとか、預貯金を差し押さえることも可能ではあります。ただアルバイトなどで定収入がない、勤務先も転々としているような場合、結局金額の支払を受けることができずに弁護費用の方がかかってしまう事例もあります」(同)

 開示請求をする弁護士費用の目安は30万円から50万円ほど。さらに損害賠償や示談交渉をするとなると、追加で必要な費用はどんどんかさむ。勝間田弁護士によると、当然ながら小さな飲食店であればあるほどその費用を払えず、虚偽の口コミをネット上に書き込まれたところで泣き寝入りとなってしまうのが実情なのだという。