テレビのバラエティ番組にテロップやワイプが当たり前に付けられるようになって久しいが、「果たして必要なのか?」という疑問の声が生じ始めている。

 9月16日放送の『今夜復活!8時だョ!全員集合 不適切だけど笑っちゃう!ドリフ伝説コントBEST20!』(TBS系)にワイプやテロップが多用されていたことが大きな話題になった。

「この番組は、1969年から85年まで放送された伝説のバラエティ番組『8時だョ!全員集合』全803回の中から、選り抜きの傑作コントをランキング形式で20個つないだもの。さらに後続の『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』(86年~92年)からも名場面が紹介されました。

 “不適切だけど笑っちゃう”とうたう通り、パトカーふうの車が舞台上を走ったままセットに突っ込むなど、現在では考えられないような豪快で過激なコントも多数登場。それ自体は視聴者も大喜びだったのですが、いちいち状況説明をするテロップに“野暮”と萎える声や、ワイプには“邪魔”“ドリフのコントに集中して見れない”といった声が上がりました」(芸能ライター)

 テロップの例を挙げると、たとえば『忍者コント』で「遊園地のような仕掛け」「正しいヒモで扉が開く」、『びしょ濡れコント』で「雨漏りの音を使ったリズムネタ」などと逐一丁寧な解説がつけられた。その他『スイカ早食い』では、「※よい子のみんなはマネしないでね」という注意テロップも。

 また画面の片隅にはワイプ枠が固定され、カンニング竹山(53)やWEST.桐山照史(35)、お笑いコンビのニューヨークゆうちゃみ(23)、永尾柚乃(7)ら、世代を超えたゲストたちの顔が代わる代わる映された。さらには、かつて『全員集合』第1回の公開収録が行なわれた三鷹市公会堂に集められた親子&タレントたちが番組を楽しむ様子がしばしばカットバックで差し込まれ、それも《いらない》《冷める》などと不評の嵐だったのだ。

■テレビ局がテロップとワイプを多用するようになった理由

 視聴者にとってバラエティ番組のテロップもワイプもすっかり見慣れてはいるはずのものだが、今回の何が多くの人の不快感を招いたのか。元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏が、そもそもバラエティ番組にそれらがつけられるようになった背景とともに、今回の令和の『ドリフ』再放送におけるワイプの功罪を分析する。

「昔のバラエティって、“ここで笑うところですよ”というガイダンスとして効果音の“ギャハハハ”という笑い声が入っていたんですよね。ただそれは嘘くさいとして、同じ役割をスタジオにいるゲストが担うようになりました。それが90年代頃から活発になった“ひな壇”にも適用され、そのひな壇にいるゲストの反応を映すのがワイプ。バラエティにおいてワイプは、基本的に“笑いのガイダンス”から始まりました」(鎮目氏)

 かくしてワイプは90年代以降、バラエティ番組の制作で多用されるようになるが、いつしか制作陣は「ガイダンス」以上の意味を持たせるようになってきたという。

「ワイプを使えば、映像が流れている間もゲストの顔を映せます。そのため途中から見た人に“こういう人たちがゲストで来ていますよ”というアピールになり、ザッピング対策になるんです。ゲストに対しても、呼んでおいて放置しているわけではなく、“顔を出した”という局側の実績になります」(前同)

 鎮目氏によれば、場面の解説あるいは次の“前フリ”をするテロップについても「ザッピング対策」の意味合いは大きいのだそうだ。

「解説は“わからないから見るのを止める”という離脱を防ぎます。また予告テロップは、前フリであってもある程度のネタバレになりますが、そうしておけば楽しみにしてもらえるはず、という狙いがあります」(同)

 もちろんすべての人がテロップやワイプにも不快感をおぼえるかといえば、そうではない。番組にもよるが、説明があるからこそわかりやすい場合は当然あるだろうし、ワイプがあることで“一緒に見ている”感覚を味わえるケースもあるだろう。