■「ウザい」と思った視聴者の心理と制作側に潜む“ホンネ”
それでは本題。まず今回の『ドリフ』再放送で、テロップやワイプが「ウザい」「邪魔」なものに見えた視聴者の心理について、前出の鎮目氏は「大前提として、ドリフはものすごく作り込まれたコント」であることを挙げる。
「しかも『全員集合』は生放送。つまり、後付けの解説がなくてもおもしろさを伝えるために最大限の努力がなされ、観覧客とのライブ感もありました。それを説明され過ぎると感情や解釈のゆらぎが統制されてしまう。またワイプは気が散る。カットバックが頻繁にあると、せっかくの興奮がいちいち素に戻され、冷めてしまう。総合的に没入できない人が多かったのではないでしょうか」(鎮目氏)
それでは、40~50年ほど前に制作された『ドリフ』を令和に再放送するにあたり、ドリフ後に広まったワイプを画面上にあえて追加採用した意図は何だったのか。
「ドリフがいかに面白かったかを、あらゆる手法を使って伝えたかったということでしょうね。キャッチフレーズに“令和・平成・昭和3世代で笑える傑作コントを大放送!”としていますから、タレントもさまざまな世代、会場にも親子を呼ぶなど、とにかく“昭和の笑いは今もウケる”という演出を強調したかったんだと思います」(前同)
“仕事”や“招待”で来ているタレントや観覧者がウケている様子をわざわざ映さなくても、視聴率で「ウケる」を証明すればよさそうなものだが、鎮目氏は「制作側の不安のあらわれ」を指摘する。
「いじわるな言い方をすれば、今のテレビマンは自分たちが放送するものに自信がないんですよね。実際、昭和と今では倫理基準が全く違います。ですから、ドリフが伝説的番組だったとはいえ、どうにか批判されずに視聴率を取るための保険をかけまくった結果とも言えます」(同)