■浮き彫りになったテレビマンの意識の変化

 全方位にわかりやすくテロップを入れる、“当時流行していた”ことをわざわざ説明するナレーションを入れる。ワイプやカットバックでさまざまな世代に通用している感を出しながらザッピング対策もする。これらが“保険”というわけだが、今回は結果として逆効果になったようだ。

「そもそもドリフは子どもたちに大人気だった番組です。その意味で、今の子どもたちにもその面白さをわかってもらえる自信があるなら、何も手を加えずに流していいはず。それをあれこれいじるのは、各方面に忖度しましたよ、見てもらうためのあらゆる手を僕たちは尽くしましたよ、というテレビマンの局内に向けたアピールとも言えます。自分たちが“仕事をした”という自己満足なので、視聴者にとって逆効果かどうかは彼らに関係ないのです。

 コンプライアンスが気になるだけなら、番組冒頭に”当時のままです”といった断り書きを伝え、そのまま流すという方法もあったとは思います」(前出の鎮目氏)

 放送当時、“下品”“教育に悪い”などとして、親から「ドリフ禁止」を言い渡された子どもたちも少なからずいた。やりたい放題のテレビ番組に対して親が「不適切」と判断していたわけだが、今やテレビ局が「不適切だけど……」と先に保険をかけつつ放送する時代だ。

 鎮目氏いわく、「“認めさせる”という加点主義ではなく、“怒られないように”する減点主義になってしまった」というテレビ業界。令和の世での『ドリフ』再放送により、普遍的なドリフの面白さを再確認すると同時に、テレビマンの意識の変遷が浮き彫りになったと言えるのかもしれない。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)