■ある意味で『虎に翼』らしい最後
トピックの中でも、政治家の司法介入と、朋一ら若手判事の左遷は、桂場のモデルとされる石田和外氏の史実では、政治家に口出しされないようにリベラルな裁判官を冷遇した、とある。ドラマとしてなんらかの着地点は見出すのだろうが、モヤモヤしたものが残りそうだ。
脚本の吉田恵里香氏は、9月15日公開の「リアルサウンドブック」のインタビューで、戦前の問題は解決していることが多く、テンポ重視で描いたが、戦後は今も未解決な問題が多いため、時間をかけて描きたかったと語っている。また、ドラマ内で寅子に「間違っていても声をあげることが大事」と語らせている。政治介入の問題は、解決はせずとも取り上げることが必要と考えたのなら、モヤモヤ上等で、すっきりとは終わらせないだろう。
朝ドラといえば、ヒロインが子どもや孫をたちに囲まれ、人気キャラの再登場、回想シーンを交えつつ、温かい雰囲気で終わるのがパターン。しかし、『虎に翼』は星家も猪爪家もちょくちょく出てくるうえ、明律大の同級生もすでに集まっている。いまさら、いつもの朝ドラの温かな大団円ラストにはなりそうにない。この点でも異例のラストになるだろう。
すっきりした最後を迎えそうにないが、いつものように司法という“地獄の道”を歩み続ける、寅子の姿が描かれるのではないだろうか。朝ドラらしくはないが、いかにも異例づくめだった『虎に翼』らしいとも言えそうだ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。