■人知れず生産中止になった駄菓子も

 思った以上に知らないことの多い駄菓子の世界。気づかぬうちに消えてしまったお菓子たちも少なくない。

「残念ながら『超ひもQ』や『サクマ式ドロップ』、『カルミン』、『元祖梅ジャム』は終売となりました。『トンガリ菓子』のように、製品を絶やさぬよう近隣の会社が製造を引き継いだケースもありますが、どこも高齢化と若者の駄菓子離れで経営は難しくなっているようです」(前出の土橋氏)

 幼い頃から慣れ親しんだ駄菓子屋の文化が消えてしまう……これは寂しいだけの感情では済まない話。

「駄菓子屋は日本オリジナルの文化。自宅を改装して他人を招き入れるというスタイルは治安の良い日本でしかできません。また、嗜好品である駄菓子がここまで安いのは、問屋制が定着した日本だけ。商品代金を月末に払う掛売で価格も抑えられています」(前同)

 日本が世界に誇るべき駄菓子屋文化。今一度、注目してみてはどうか。

土橋真(どばし・まこと)
駄菓子屋文化研究家。生まれも育ちも東京浅草。1980年代多感な少年時代を下町の本場で揉まれ、馴染の駄菓子屋『ババヤ』や他エリアの駄菓子屋で良くも悪くも多くを学んだ後、無事に駄菓子屋通いを卒業。長じて、町の中で静かに佇む駄菓子屋の魅力に改めて気づき、耳目を頼りに足で探すスタイルでまとめ上げたブログ【大切なことはすべて駄菓子屋が教えてくれた】で現在駄菓子屋事情を活き活きと描く。会社員として働く傍ら、『マツコの知らない世界』や『日本経済新聞文化欄』など多くのメディアに出演2023年には、研究成果の集大成【全国駄菓子屋探訪】を卜ゥーヴァージンズ社より刊行。駄菓子屋文化を日本遺産にすべく、多岐に渡り活動中の46歳、2児の父。