いよいよクライマックスを迎えているNHK大河ドラマ『光る君へ』。
紫式部こと、まひろ(吉高由里子)は宮仕えを開始し、中宮・彰子(見上愛)の指南役を務めながら、『源氏物語』の執筆に明け暮れる。
そこで印象的なのが、同じく中宮に仕える他の女房たちからの嫉妬や陰口、嫌がらせだ。
9月1日に放送された第33回(『式部誕生』)では、まひろが女房として後宮(こうきゅう)入りしたものの、慣れぬ生活のため寝坊してしまう。すると、他の女房に「誰ぞの足でもお揉みになっていたのではないの」と皮肉られて、嘲笑の的になるのだ。
「足を揉むというのは、女房が貴人男性の寝所に侍り(はべり)、男女の関係になることを意味しています」
と言うのは、歴史研究家の跡部蛮(あとべばん)氏。こう続ける。
「紫式部が仕えた中宮・彰子には40余人の女性が奉仕していて、その中には家柄の高い“上臈(じょうろう)”と呼ばれる女房達が多くいました。彼女らからしたら、家柄がさほど高くないのに、文学的素養や才能を買われて後宮入りした紫式部は、恰好のいじめの対象だったのでしょう」
女性ばかりの職場に嫉妬はつきもの。実際に紫式部は、『紫式部日記』にこんな体験談を記している。
あるとき、彼女が馬の中将の君という女房と一緒に牛車へ乗り込むと、露骨に「わろき人と乗りたり」(嫌な人と一緒に乗っちゃったわ)」という態度を示されたという。
「牛車には2人ずつ乗り、ある程度までは序列で乗る順番が決まっていましたが、紫式部が乗車したのはその後。つまり、彼女が序列を無視したわけではないんです。ところが、その女房は“私を誰だと思ってるの? 『源氏物語』が宮中で話題になっているからって調子に乗るんじゃないわよ!”という心持ちだったんでしょう」(前出の跡部氏)