■次の『アンメット』は生まれるか?

 それは、“今どきの問題”と思えてしまうこと自体が、すでに知られている“ありがち”なテーマだといえるから。筆者のようなおじさんが思ってしまうのでは、ターゲットである20代~40代ならばなおさらだろう。要するに若者に刺さるネタではないのだ。ユーザーに若い層が多いTVerで惨敗するのも納得だ。

 また、局側の意識にもズレがあるようだ。昨年4月に新設された同枠ドラマの脚本は、『日曜の夜ぐらいは…』が岡田惠和氏、『何曜日に生まれたの』が野島伸司氏、『たとえあなたを忘れても』が浅野妙子氏、『アイのない恋人たち』が遊川和彦氏と予算をかけた大御所起用。作品内容はさすがに安定していたが、残念ながら若さは感じられなかった。

 そのためか、大ヒット作を生み出した脚本家のドラマということで放送前は話題を集めても、これらの視聴率は残念ながら惨敗に終わっている。その後、中堅の脚本家を起用するようになったが、注目度の低くなった同枠では、数字を上げていくのは難しい。新鮮みのないテーマではなおさらだろう。

 とはいえ、ドラマ自体の出来が悪いわけでないし、出演者の演技も素晴らしい。もっと時間的に条件が良い枠で放送すれば、本作は違う結果を出せたかもしれない。ABCテレビと同じ大阪のカンテレ制作(フジテレビ系)の月曜10時枠が、『エルピス』や『アンメット』などの話題作を生んでいるだけに、なおさらだ。

 返す返すも不幸な作品になってしまったが、同枠で10月20日スタートの『マイダイアリー』は清原果耶(22)主演で、脚本は『わたしの一番最悪なともだち』(NHK総合)でギャラクシー賞を昨年受賞した、新進気鋭の兵藤るり氏。社会人1年目となった主人公が、大学時代の仲間との大切な思い出を振り返る構成のヒューマンドラマだが、不幸を繰り返さないことを願いたい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。