■期待できる橋本環奈の演技以外の力

 一方で、期待できる要素もある。それは、脚本をNHKのドラマ『正直不動産』などを手掛けた、根本ノンジ氏が担当していること。その作風から、本作にもコメディ要素が入ってきそうなのだが。バランスを間違えると、とっ散らかってしまいがち。しかし、根本氏が手がけた『正直不動産』では、コメディとシリアスが絶妙なバランスだった。本作も、きっとうまくまとまめてくれるだろう。

 あとは、やはりヒロインを務める橋本環奈だ。本作の制作統括・宇佐川氏はインタビューで、まわりを引き立てる演技を期待していると発言。“伝説のギャル”に“博多ギャル連合(ハギャレン)”など、飛び道具的なキャラが用意されているが、橋本がうまく引き立て、違和感なくドラマを展開させてくれるはずだ。

 さらに、宇佐川氏は「大変なときでもどんなときでもマイペースさを崩さず、私たちを引っ張ってくれるんです」と語り、座長としての橋本にも期待している。

 すでに若手の域を超えた貫禄を見せ始めている橋本。23年の『NHK紅白歌合戦』では、有吉弘行(51)、浜辺美波(24)とともに司会を務めたが、要所をきっちりおさえる進行ぶりが印象的だった。長丁場となる朝ドラの現場でも、座長としてまわりを引っ張っていってくれるだろう。

 表面的には不利な要素が目についてしまう『おむすび』だが、根本ノンジ氏の脚本の妙と、橋本環奈の人間力と演技力で、成功作になる可能性が見えてきた。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。