人気の駄菓子『ビッグカツ』を製造する食品メーカー・『すぐる』は、衣をつける前の状態である「ビッグカツの肉」を8月5日から250袋限定で販売したところ、3日間でほぼ完売するほどの人気を博したという。

 しかし実はこのビッグカツの中身、見た目が肉っぽいだけで、原材料はスケトウダラなどの魚肉のすり身となっている。冷静に考えてみると、40円でトンカツが食べられるわけないのだ。駄菓子カルチャーに明るい元祖B級グルメライター・田沢竜次氏が解説する。

「たしかに昔から駄菓子業界では、こうしたフェイク食品が横行しています。しかし、そこで“騙された!”とムキになるのはヤボというもの。カニカマにカニが入っていないことや、メロンパンにメロン成分が入っていないのは周知の事実じゃないですか。むしろ価格を抑えながら、少しでも本物に似せようとする企業努力に拍手を送るべきです」(田沢氏=以下同)

 ほとんどの駄菓子は、小規模なメーカーによって作られている。そのために独自の進化をたどったというのが田沢氏の見立てだ。

 どこか間が抜けたようなパッケージのイラストやキャッチコピーは、大メーカーの企画会議なら一発で跳ねられるセンスである。

「僕が子供の頃、明治、グリコ、ロッテなど大企業のお菓子は一段格が上の存在でした。値段も高いし、遠足や運動会でしか買えませんでしたから。一方、家で出されるお菓子はクッキーとかおせんべいが中心で、“遊び心”が足りないように感じられた。そんな中にあって駄菓子は、良識ある親が眉をひそめるような存在でしたね」

■子供たちが夢中になった懐かし駄菓子

 当時、田沢氏の心をワシづかみにした駄菓子に『すもも漬け』(中野産業)がある。真っ赤に染まった毒々しい液体に人工甘味料や人工着色料がたっぷり入っているのは明らか。フルーツのヘルシーなイメージとは真逆である。だが、その背徳感こそが病みつきになる要素だったという。

 一方、『キャベツ太郎』(菓道)にはキャベツが一切入っていない。主な原材料はトウモロコシである。

カエルのキャラクターでおなじみのキャベツ太郎 ※撮影/編集部
カエルのキャラクターでおなじみのキャベツ太郎 ※撮影/編集部

 水飴を練った『青りんご』(共親製菓)も無果汁で、りんご要素はゼロだ。

なぜか女子人気の高かった青りんご ※撮影/編集部
なぜか女子人気の高かった青りんご ※撮影/編集部

『わさびのり太郎』、『のし梅さん太郎』、『とり焼さん太郎』、『酢だこさん太郎』(菓道)は、いずれも魚肉すり身が主原料。イカ粉が入っている製品はあるけど、ウナギ、鶏やタコは入っていない。

『サイダーヨーグル』や『フラワーヨーグル』(神谷醸造食品)にいたっては、原材料がショートニング、砂糖、コーンスターチ。ヨーグルトどころか乳製品ですらないのだ。

2色展開のサイダーヨーグル(青)とフラワーヨーグル(赤) ※撮影/編集部
2色展開のサイダーヨーグル(青)とフラワーヨーグル(赤) ※撮影/編集部