■TBSドラマの逆襲なるか
また、演出にも《かなり攻めたカット割りとカメラワーク。すごくキュンとくるカットと、やりすぎじゃない?って思うカット入り混じってて見てておもしろかった》《自閉スペクトラム症について、家族の接し方が淡々としていたり、自転車の色をカラー番号と合わせてたり、わりとリアル》などと、称賛の声が。
初回ならではの説明シーンが多かったが、最後までテンポよくダレることはなかった。演出は『凪のお暇』や『私の家政夫ナギサさん』(ともにTBS系)、『妻、小学生になる。』(日本テレビ系)などを手掛けてきたベテランの坪井敏雄氏。これらの作品で見られた坪井氏の絶妙な演出も強みだ。
本作は“ヒューマンサスペンス”をうたっている。ライオンがなぜ一人で小森兄弟の家にやってきたのか? 母子行方不明事件の真相追及が物語の柱になると思われるが、坪井氏の演出ならきっと盛り上げてくれるはず。また、事件に絡むのが芸達者な向井理(42)と岡山天音(30)、尾野真千子というのも頼もしすぎる。
社会現象を巻き起こした今年1月期『不適切にもほどがある!』以降、4月期『9ボーダー』、7月期『笑うマトリョーシカ』と、大きなヒットに恵まれなかった同枠(金曜午後10時)だが、本作は”ドラマのTBS”の良心を感じられる作品になりそうだ。
この良さはジワジワと伝わるはず。『ふてほど』を超える可能性は十分にあるだろう。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。