■斎藤工が見せた“映画人”ならではの男気

 写真を撮られていた斎藤もトラブルが起こったことに気づき、声を上げたカメラマンに近づいて真剣な表情で事情を聞いていた。

「普通の俳優ならトラブルはスルーして会場に入っていくところでしょうが、斎藤さんはカメラマンに近づいて、寄り添うようにして1分以上にわたって話を聞いている感じでしたね。

 斎藤さんは人気俳優ですが、映画監督や映画評論家の一面もあり、“映画愛”にあふれている人物として知られています。だからこそ、『エシカル・フィルム賞』の審査委員長も任されたのでしょうが、自身が関わる映画祭で起きたトラブルの中身を知りたい、対応の手助けをしたいという思いもあり、被害を受けたであろうカメラマンと話し込んでいたのではないでしょうか。

 映画を愛する斎藤さんは、俳優たちのハレの舞台である映画賞の場も大切にしたいという思いがあるのではと思われます」(前出の現場にいた芸能関係者)

 斎藤は2012年にショートムービー『サクライロ』で監督デビュー。17年には『blank13』が「第20回上海国際映画祭」で「アジア新人賞部門最優秀監督賞」を受賞したほか、14年からは映画館のない地域に映画を届ける移動映画館プロジェクト「cinema bird」もスタートさせている。

 スポーツ紙デスクはこう話す。

「今夏、フランスで開催されたパリ五輪では選手村での盗難被害が相次ぎましたが、実は取材する側のカメラマンのカメラや関連機材の盗難被害も毎日のように発生し、関係者の間で大きな問題になっていたんです。

 五輪の運営サイドからは毎日のように前日までの“被害報告”があり、“カメラの盗難に気をつけて”という注意喚起が行なわれていたといいます。今、世界中からカメラマンが集結する大きなイベントでは、よからぬ輩が窃盗事件を起こしていると見られ、国際的な問題に発展していると。もしかしたら『東京国際映画祭』のレッドカーペットでも、そうした事件が起きていたのかもしれませんね……」

 カメラマン席で勃発したトラブルに、全く関係ないながらも近寄って話を聞き、対応をしようとしているように見えたという斎藤。男気あふれる行動には、彼の深い映画愛があったのかもしれない――。