■双寿丸・伊藤健太郎を待つ悲劇
双寿丸への言葉から、まひろには双寿丸が三郎に重なって見えたようだが、ドラマ的には双寿丸は直秀の立ち位置だろう。武者であり、「得意な役割を担って力を合わせて戦えば負けることはない」と、時代を先取りした考えを語る双寿丸は、賢子にとって、今、ここ以外の新しい世界に連れて行ってくれる、いわゆる“白馬に乗った王子様”だ。
かつて、まひろにとって、貴族社会を揶揄する散楽一座の座員で義賊という裏の顔を持つ直秀は、新しい世界に連れて行ってくれる(かもしれない)王子様だった。しかし、直秀は盗みに入ったところを捕らえられ、鳥辺野で殺されてしまうという、悲劇の最後を迎えている。
直秀と同じく、双寿丸はオリジナルキャラ。仕えている武者・平為賢(神尾佑54/)は、のちの刀伊の入寇(1019年に起きた外国の海賊による九州地方への侵攻)で大宰府に向かうため、双寿丸も同行するだろう。賢子は双寿丸と離れることになるが、刀伊の入寇では民間人を含む300人以上が命を落とした激戦。双寿丸がそこで死んでしまう可能性は高い。直秀と同じく、悲劇の最期を迎える可能性は高い。
まひろは道長と夫婦になることはなく、想いを抱いたまま、中宮・藤原彰子(見上愛/24)の女房(朝廷に仕える女官)として生きてきた。賢子も彰子の女房になり、母と同じキャリアを生きていくことになるはずなので、賢子も双寿丸との思い出を抱えたまま生きていく、“まひろと直秀パターン”をたどるかもしれない。
物語は、残すところ7話だと思われる。宮中のドロドロした雰囲気も吹き飛ぶような、癒やしの賢子と双寿丸のシーンを見られるのは、そう長くないだろう。悲しい別れが予感されるが、2人の恋の行方に注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。