■「スタッフ分の弁当も」ワガママ化する事務所界隈
そんなエピソードは他にも。大物女優Y(50代)の元付き人は、「撮影のときの音楽を用意するのが大変だった」と明かす。
「その方はモデル出身なのですが、“気分”をつくるために、グラビア撮影時には必ず音楽をかけるのです。スマホやサブスクどころか、まだデジタル音楽プレーヤーもない時代。CDプレイヤーと彼女のお気に入りの音楽が入ったCDを何十枚も用意しなくてはいけませんでした。
しかもかけてほしい曲がコロコロ変わる。一度かけても“この曲じゃノれない”として、一瞬で“チェンジ”を求められることもしょっちゅう。私は常にDJよろしく曲を流すためにスタンバっていましたね。なので撮影が入るとハードでした」
女優のご機嫌を損ねまいとするあまり、事務所スタッフが業者に無茶振りをするケースもある。ある売れっ子女性タレントZ(20代)のCMをキャスティングしたことのある代理店営業マンが述懐する。
「拘束時間が2時間でも、必ず弁当を用意しろというマネジメント事務所がありました。弁当はいくつかあるお気に入りの店のメニューからの指定で、タレントの分だけなく事務所スタッフ分すべてです。ロケ遠方時の交通手配では、指定席の座席番号までガチ指定、タクシーも先に手配されていないと気が済まない。もちろん事務所にとっては大事なタレントで、彼女だからこそ起用されているわけですが、スタッフの便乗感もなかなかでしたね」
前出の芸能プロ社員は、"スタッフ側の意識の変化”を指摘する。
「俳優も女優も、ある意味“自分が一番”という強いメンタルがないと務まらない職業です。業界のトップにいるということはそれだけ気が強くて当然で、周囲が彼らのワガママに振り回されるのも通例。それでも“この人のマネージャーをやっている”ということを誇りに思って仕事をしていたものです。
もちろん、なかには暴力をふるう、明らかな嫌がらせをするなど事件性を帯びるパワハラもあるのは否めませんし、そういった体質が残る古い業界であるのも事実です。ただ、今は働き方に求める価値観が大きく変わりました。いわゆるワーク・ライフ・バランスを大事にしたいとか、上司・部下の垣根なくフラットな組織で働きたいような若手にとっては、“ドリンク提供のタイミングぐらいで激怒されても……”とか、“1分遅れても客先には迷惑をかけていないのに”などと、担当タレントの行為を理不尽に思うことはあるかもしれませんね」
ワガママかパワハラか──常識では測れない才能の集まるところ、それが芸能界である。