■結・橋本環奈のじれったさ

 これまでの朝ドラでは、『カムカムエヴリバディ』や『舞いあがれ!』も、物語の時系列上、阪神・淡路大震災が起こっていたはずだが、劇中では触れられることはなかった。それらに対し、本作が被災者のリアルな描写に踏み込んだのは称賛に値するが、これが視聴率の本格的な浮上のきっかけにはならず、10月29日の放送回13.5%と落ちてしまった。

 ドラマが始まってから、どうにも人気がくすぶっていた原因の一つに、ヒロインの栄養士になるという目標がなかなか見えてこない、じれったさがある。本作は結の成長物語のはずだが、その軸がなかなか見えず、ギャルに困惑したり、先輩に恋して失恋したりと、小さなエピソードが繰り返されるばかりで、ヒロインの人生が転換するヤマ場がないのだ。

 強いて言えば、糸島フェスティバルでパラパラを踊る中、ハギャレンの仲間との絆、踊る楽しさを感じ、結が笑顔を取り戻したのがヤマ場だったかもしれない。しかし、それは結がギャルの意義を理解したにすぎず、ヒロインの人生としては半歩ほど踏み出した程度だ。

 また、回想シーンによる神戸編も、大きくスポットが当てられたのは姉の歩で、結ではない。親友・真紀との関係、つらい別れが描かれ、それが現在の歩につながっていることが描かれた。6歳の結が避難所で、冷たくなったおむすびを食べるシーンなどから、タイトルが回収された回もあったが、結が栄養士を目指す本筋とつながったわけではない。