■しつこい相手は同居人の存在を匂わせて撃退
実際にあった、具体的な訪問手口を見ていこう。
(1) リフォーム業者に扮した男が訪問。「屋根の瓦がずれていて、このままだと水漏れする。無料で点検しますよ」と言って家に上がり込む。世間話を装いながら、「息子さんや旦那さんはいないの? お仕事?」と家族構成を確認された。
(2)20代前半の男2人がインターホンを鳴らす。「近くで鎖のついた犬を保護したんですが、犬を飼っていませんか?」と聞かれた。犯行時に邪魔になる飼い犬がいるか、調べていた様子。
(3)実在する金融機関や不動産業者の名をかたり、「保険請求の件で確認したい」「リフォームのため間取りを知りたい」と訪問を求める電話があった。資産状況や自宅の情報収集目的と思われる。
いかにも自然な口調で、“家の中”を覗き込もうとする凶悪犯たち。この魔の手から逃れるには、どうしたらいいのだろうか。前出の元神奈川県警刑事の小川氏が話す。
「インターホンで応対し、家には上がらせない。買い取り業者だと思い、“家に上げてもらったら、こちらで探します”と言われ、“そうですか”なんて答えては絶対にダメ。しつこければ、“息子に確認します”と、嘘でもいいので同居人の存在を匂わせてください」
自宅にかかってくる、不審な電話への対策も必要だ。
「防犯アナウンス機能付きの電話が有効です。“この電話は特殊詐欺対策のため録音させていただいています”とメッセージが流れるだけで、相手が二の足を踏む効果があります。また、日頃の防犯対策も重要です。窓に防犯フィルムを貼っておけば侵入までの時間を稼げ、その間に通報できます。そして、お金は必ず分散して保管してください」(前同)
用心に越したことはない、と肝に銘じてほしい。
小川泰平(おがわ・たいへい)
犯罪ジャーナリスト、元神奈川県警刑事。
1961年、愛媛県出身。神奈川県警所属時は、警察本部捜査三課、国際捜査課など、第一線の部長刑事として主に被疑者の取り調べを担当する。知事褒賞・警察局長賞等、500回以上の受賞歴を持つ。柔道四段2009年、30年間勤めた警察を退職。その経験を活かし、テレビや雑誌など、広くメディアで活躍している。