■誠実さが光る『放課後カルテ』

 最近のドラマは恋愛でもお仕事系でも、視聴者の興味を惹くためミステリー要素を入れることが多い。そんな中、恋もせず人も死なない、本作のような真正面からのヒューマンドラマが支持されるのは、スタッフ、演者の見事な仕事による。特に松下の不器用ながらも、誠実さをにじませる演技はさすがだ。

 また、昨年10月期放送『セクシー田中さん』の、原作漫画からの改編が問題となった不幸な出来事のこともあり、日本テレビのドラマは漫画が原作というだけで、視聴者に敬遠されてしまう空気があった。本作はドラマオリジナル展開もあるが、原作者と綿密な打ち合わせをし、作品の世界観を壊さないよう作られている。

 そのおかげか、原作の日生氏は自身のXアカウントで、第6話の放送後、《今回の話はコミックス7巻に載ってます。漫画は結構コミカルな感じになってます。おにぎりも出ません…!》《漫画の藤岡先生は牧野に次いでぴくりとも笑わないキャラなので、ドラマではめっちゃさわやかで素敵…と毎回見てます…》とポストしていて、改編を楽しんでいる様子だ。

 日本テレビ同枠前期の『GO HOME〜警視庁身元不明人相談室〜』は、ヒューマン路線ながら、中途半端なお遊び要素が嫌われたか、十分な数字を残せなかった。さらに今期ドラマも、『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』と『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』が、TVerのお気に入り登録数がドラマで部門で15位、18位と寂しい状態が続いている。

 原作ものどころか、オリジナル脚本作品でも、不調が続いていた日本テレビ系のドラマだが、それを『放課後カルテ』で止めたのは、松下と出演者、そしてスタッフの誠実さのようだ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。