■『おむすび』の結は苦労知らずか

 これは、ヒロインの描き方に問題があるためだろう。朝ドラの基本はヒロインの成長物語で、その軸をしっかりさせるため、挫折や困難はつきもの。たとえば前期の『虎に翼』は全編にわたって女性への差別意識という困難を、その前の『ブギウギ』は早い段階で先輩との別れや出生の秘密などが描かれた。そこから抜け出そうと頑張るから、視聴者はヒロインを応援する気になれるのだ。

 だが、結にはそれら挫折や困難が見当たらない。震災の記憶と姉との確執はあったが、残念ながらそれは「栄養士になる」という物語の軸に結びついていない。今のところ、彼氏の栄養管理をしたいという理由だけなので応援する気になれず、結が専門学校でも“ギャル魂”を貫こうとしても、ツッコミが激しくなるばかりだろう。

 とはいえ、結は専門学校に入学したばかり。今後、結の人生を左右するエピソードや、挫折や困難があるかもしれない。視聴者が応援したくなるような、朝ドラヒロインになれるのか、11月25日から始まる第9週「支えるって何なん?」以降の展開に期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。