廃棄される野菜などを利用して作る石けんを紹介した2月4日放送のNHK『首都圏ネットワーク』に対し、批判が上がっている。
かつて小麦成分を含む「茶のしずく石けん」を洗顔に使った人たちが重篤な小麦アレルギーを発症した事件を知る人からは、《アレルギーを引き起こしたらどうするのか》と批判が続出しているのだ。NHK横浜放送局の公式Xが2月4日の放送回を宣伝した投稿には、
《【茶のしずく石鹸】をお忘れで????》
《「茶のしずく石鹸」事件を忘れたのか?食べ物を皮膚に塗っちゃいけない。食物アレルギーを引き起こしかねないのだよ。NHKには猛省を求める》
《NHKは茶のしずく石鹸薬害のことなどすっかり忘れている、と理解しました》
といった批判の声が寄せられている。
そもそも“茶のしずく石けん事件”とは、2005年に福岡の化粧品販売会社が発売した『茶のしずく石鹸』(旧商品)の使用者が小麦アレルギーを発症し、意識不明になった人もいたことが販売から数年経った後に次々と発覚した一件だ。元々小麦アレルギーを持っていなかった人にも症状が出たケースも見られ、2012年に全国の被害者が損害賠償を求めて提訴。賠償額の総額が100億円を超える裁判は2020年にすべて和解したが、この騒動は世間に大きな衝撃を与えた。
そういった経緯もあり、先の『首都圏ネットワーク』の石けん特集が炎上してしまったわけだ。
「同番組で取り上げられたのは、神奈川県の農家が石けんを廃棄野菜で作り、直売所で販売しているというもの。“もったいない”の精神から生まれた、キャベツやひじきを使った石けんを手作りする様子が放送されています。中で石けんの“保湿効果”について触れる箇所もありました。
放送後の反響もあってか、NHK横浜放送局は6日になり、公式Xで《このせっけんは食器などの洗浄を目的とした「台所用」として販売されているもの》と、あくまでも”化粧品の類ではない”ことを強調。同時に《使用する場合、アレルギー反応が気になる方は成分表示を十分に確認してください》と投稿しています。番組内では用途については紹介されていませんでしたが、“保湿効果”について触れた以上、人体に使うことを示唆したと捉える視聴者がいてもおかしくありません」(WEBメディア編集者)
そもそも一般人の石けんづくりがなぜ問題視されるのか。医療系ライターが解説する。
「石けんは、顔や皮膚など、人体への使用を目的とするものは医薬品医療機器等法(薬機法)上の『化粧品』、さらに薬用石けんは『医薬部外品』に該当し、製造・販売には厚生労働省の許可が必要です。一方で台所用・洗濯用の石けんは『雑貨』に該当し、前述の許可を持たない一般人でも作って販売することが可能ですが、石けん作りには一般的に加熱した油に水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を加えて混ぜる工程がある。この苛性ソーダは劇物で肌に触れたり目に入ったりすると健康被害が起きる危険性もあります。
また、石けんを『雑貨』として販売する場合も、界面活性剤の割合の表記が義務付けられていて、“洗濯用石けん”“洗濯用複合石けん”“台所用石けん”“台所用複合石けん”という4つの名称以外は使えません。また、人体への使用や効果を想起させる表現も薬機法違反です」
本サイトでは、NHKに批判の声や放送上の責任ををどう受け止めているのかを取材した。広報局の担当者はこのように回答する。
「番組で紹介したせっけんは、製造や販売に薬機法上の許可が必要な『化粧せっけん』ではなく、食器などの洗浄を目的とした『台所用せっけん』と明記して販売されていると認識しています。様々なご意見があることは承知していますが、取材・制作の詳しい経緯についてはお答えしていません」