■根本は王道だった『光る君へ』
20年の時を経て再びの距離を縮めるまひろと周明(松下)、合戦での隆家(竜星)や双寿丸(伊藤)の活躍と、ラスト直前で物語は盛り上がっているが、視聴率は下がってしまった。全話平均も現時点で10.7%と、評価が著しく低く「失敗大河」と言われた前期『どうする家康』の11.2%よりも低い。
女性が主人公の大河ドラマは、15年放送の『花燃ゆ』や17年放送の『おんな城主直虎』など、苦戦している作品が少なくない。さらに、平安時代というなじみのない時代を舞台にした大河ドラマも、12年放送の『平清盛』が平安時代末期を描いて苦戦している。そのため、主人公が女性で平安時代が舞台の本作は、「異例の大河」だといわれていた。
しかし、異例ながらも大河ドラマのツボはちゃんとおさえていた。それは、歴史に新たな光を当てること。X上でも、《元々「刀伊の入寇」そのものが、よほど歴史に詳しくないと知らない、教科書でも流されちゃうような出来事で、平安時代はマロの時代…みたいな誤解も生まれていた。本作でこれを描いたことで、当時、そこに生きて戦った人の活躍が今の人に伝わった…これぞ大河ドラマのよさ》という指摘が。
思い返せば、『どうする家康』も「情けない家康」という新解釈を題材にし、『鎌倉殿の13人』もマイナーな北条家の鎌倉幕府を描いていた。本作の脚本を手掛けている大石静氏はインタビューで、「脚本を書いた私も含め、楽しみながら、知らないことを知るという喜びが『光る君へ』にはあったのではないかと思います」と語っている。異例とは言われながら、大河ドラマの“ど真ん中”の魅力があったのだ。それを丁寧に描いたからこそ、視聴者から高評価を集めているのだろう。
惜しむらくは、とっつきにくい時代だったということだけ。本作は野心的かつ、王道の大河ドラマなのは間違いない。8日放送回は、異国の脅威が太宰府から伝わり、朝廷に動揺が広がる。まひろ(吉高)と道長(柄本)は、どんな最期を迎えるのか。残り2話に注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。