■医療機関の負担が増えて大パニック

 感染症対策に詳しい岡田正彦・新潟大学医学部名誉教授もその一人だ。

「風邪が5類に分類されると、まず症例を報告する任務を負った病院の仕事が増えます。ただでさえ忙しい医療機関に新たな負担がかかることになるのです」(岡田氏)

 それだけではない。ただの風邪が5類に格上げされたことで、不必要な薬の処方も増える恐れがあるというのだ。

「風邪をひいて熱が出たり、咳が出たりするのは“体を休めろ”というサイン。2〜3日寝ていれば治るケースがほとんどなのです。熱が出るのも風邪のウイルスを殺すためですから、解熱剤なども、本当は使わないほうがいい」(前同)

 患者が過剰に薬を服用する事態になりかねないのだ。また、抗菌剤を使う医師もいるが、こうした処方で耐性菌が増えてしまうリスクも十分考えられる。

「当面は、近所のかかりつけの病院に行く限り、患者にとっては処方薬が増えるぐらいでそんなに大きな影響はないでしょう」

 と前出の牧氏は言うが、さらなる懸念が。

「将来的に、風邪の5類感染症格上げが医療保険にはね返る可能性は無視できません」(前出の社会部記者)

 これ以上、庶民の支出が増えぬことを祈るばかりだ。

岡田正彦(おかだ・まさひこ)
医学博士。新潟大学名誉教授。1972年、新潟大学医学部を卒業。水野記念病院理事、水野介護老人保健施設長。予防医療学を専門とし、米国心臓学会プロフェッショナル会員。2002年に臨床病理学研究振興基金「小酒井望賞」を受賞。長年、病気を予防するための診療をおこないながら、日本人におけるがんや血管障害などの危険因子を探るための調査にも関わる。

牧潤二(まき・じゅんじ)
医療・医学ジャーナリスト。1950年、香川県生まれ。1973年、東京経済大学経済学部を卒業。1982年に牧事務所を開設。医療制度や医学・科学の現代史など、著書多数。