福島県にある「東北サファリパーク」で2023年9月28日、男性飼育員(当時53)がライオンに襲われて亡くなるという事故があった。それから1年以上が経った12月9日付で、福島県警が園長らを業務上過失致死の疑いにより書類送検したことがわかった。
同パークでは1989年12月、入社1年目の女性飼育員(当時19)がトラに襲われ、右腕の肘から先を噛み切られるという事故が発生した過去があるが、他の動物園を含め、飼育員が園内の動物に襲われる事故は度々発生する。
果たして園内の従業員はどれほど危険と隣り合わせなのだろうか――。
まずは昨年に起きた事故の経緯を、全国紙社会部記者が説明する。
「亡くなったのは、ライオンなど猛獣を担当していた入社27年目のベテラン男性飼育員。エサやり作業中の出来事でした。檻に出入りする扉はライオン用と飼育員用の2つがあるのですが通常、飼育員は檻の中にエサを置いたあと外に出て飼育員用の扉を閉めてからライオン側の扉を開けて檻に入れるという手順です。
しかし事故当時は、エサを置いた後も飼育員用の扉が開きぱなしの状態になっていた。監視カメラの映像からは、男性飼育員が扉を閉めようとするも間に合わず、ライオンに引きずり込まれたことが分かっています。作業開始から4分足らずの間に起こった事故でした」
なお、「東北サファリパーク」と同一法人である「那須サファリパーク」でも、過去に飼育員が襲われる事故が何度か発生している。
「那須サファリパークでは1997年、21歳と19歳の女性飼育員と実習生がライオンへの餌やり中に襲われているほか、2000年は21歳の男性飼育員が清掃中にライオンに襲われ、負傷する事故が起きています。2022年には檻に入れ忘れたトラが3人の飼育員を襲いました。襲われた3人は26歳と22歳の女性飼育員、24歳の男性飼育員といずれもキャリアが浅かったことが当時報じられました」(前出の社会部記者)
昨年の事故を受けて「東北サファリパーク」は、発生の翌月に再発防止策を盛り込んだ「改善計画書」を県に提出。作業手順を記したマニュアルについて、テキストのみだったものを写真つきで明示する、エサをやる時は飼育員側の扉を開けず、檻の隙間から入れるなどの対策を示した。
なくらない痛ましい事故に対策はあるのか──。本サイトは旭川市旭山動物園の元園長で、現在は札幌市環境局参与として円山動物園を担当する小菅正夫さん(76)に話を聞いた。
旭山動物園に36年間務めた小菅氏は「物理的に事故を防ぐ手立てを考えることも大切。常日頃、事故は起こるものとして仕事に当たることが重要」だと話したうえで、こう続ける。