■ハッピーエンドに終わらせない誠実さ
祥吾(向井)は逮捕され、柚留木(岡山)は再出発するために警察に出頭。愛生(尾野)とライオンがしばらく小森家で暮らすことになり、美路人(坂東)は少しずつ自立してきて、洸人(柳楽)は自分の時間を持てるようになった。しかし、4人で平穏に暮らしはじめたと思ったところで、最後に洸人が家出してしまい、美路人がパニックに――。
美路人の成長は本来、喜ぶべきことだが、ずっと支えてきた洸人はそのことをどう感じるのか? 脚本を担当している徳尾浩司氏と一戸慶乃氏が、作る上で物語より気持ちを優先させたと語っていたが、それを考えると、ただのハッピーエンドで終わりそうにないのは、当然の帰結なのだろう。そして、人物に向き合いその気持ちを丁寧に描いてきたからこそ、ここまで視聴者の支持を得たのだ。
それもあって、本作の配信サービス・TVerのお気に入り登録数は、断トツ1位の『わたしの宝物』(フジテレビ系)に続いて、今期ドラマ部門の2位に。数字の伸びは、通常は物語が進むにつれてナギ状態になっていくが、本作は終盤にきても勢いは落ちず、さらなる伸びを見せている。
そんな好調な数字を見たり、視聴者の高い評価を聞いて、TVerで配信されているダイジェスト版などから、後追いで本作を見始めた人が多いのだろう。昨今の地上波ドラマは、キャストや設定などの話題性で数字を伸ばす作品が多い中、内容の良さだけでヒットを勝ち取るのは異例のことだ。
最終回は洸人と美路人、そして愛生、ライオン(愁人)との新たな関係が描かれるはず。幸福なだけのラストにならないかもしれないが、感動的なエンディングを迎えることは間違いないだろう。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。